アウトドアスポーツのトレーニング時は、適切な発汗管理によって、雨、風、雪、寒さなどの悪天候から身を守る必要があります。スリーレイヤーシステムにより、練習しているスポーツや天候を考慮した適切なウエアを選びやすくなっています。三層のウエアは体をドライで暖かく保ちます。余分な湿気を取り除くためのベースレイヤー、暖かさを保つためのミッドレイヤー、風雨から体を保護するためのアウターレイヤーからなります。

湿気を逃がす通気性ベースレイヤー
身体を動かすと体温が上がります。私たちの身体はこれに反応し、オーバーヒートしないように発汗します。肌の表面で汗が蒸発して身体を冷やします。汗は外気にさらされると温度が下がり、水蒸気が凝縮して皮膚の表面で水分になります。
コットンのような吸水性素材のTシャツが濡れた場合、運動をやめると水分が肌に直接触れるため、すぐに冷たくなります。
肌の上に直接ベースレイヤーを着用するのは、汗を消散させて乾いた状態を保つためです。
スポーツの練習をする時は湿気を取り除くベースレイヤーが必要です。よく水を吸って乾くのに時間がかかるコットンTシャツの着用はひかえましょう。
ポリエステルやポリアミドなどの合成繊維は耐水性があり、水分を吸収しません。また、湿気は衣服の外側に出て行くので、肌に触れることはありません。合成繊維のTシャツを着用すると、寒さを感じることなく体温調整することができます。また、速乾性もあります。
メリノウールで作られたベースレイヤーもあります。ウールは最大でその重量の33%の水分を吸収しますが、なぜベースレイヤーとして使用するのでしょうか?非常に吸水性の高い素材であるウールは、汗が肌に触れるのを防ぎます。湿ったウールであっても優れた断熱素材になります。また、ウールには防臭作用もあるので、毎回洗濯する必要はありません。それらの特性からメリノウール製のベースレイヤーは、特に低強度の運動用途で扱いやすいです。
合成繊維とウールの混紡生地もあります。1つの生地になることで、それぞれの特性を最大限に活かすことができます。

断熱性のミッドレイヤーで暖かさが持続
ミッドレイヤーが身体から発生した熱を保温することで寒さから身を守ります。
繊維が空気を閉じ込めるため断熱層になります。多くの空気を閉じ込めることで、衣類が身体の熱をキープします。
ミッドレイヤーで暖かさを調整します:
- 外気温が高い、または持久性の運動をする場合:これらの条件下では、ミッドレイヤーなしで良いでしょう。ただし、休憩時の防寒対策や天候の変化に備えてバックパックに暖かいレイヤーを入れておくことを忘れないでください。
- 涼しい気候条件の場合:保温性と優れた除湿性を兼ね備えているフリースが理想的です。軽量の合成繊維の断熱性のジャケットも保温性に優れ、コンパクトに収納でき、お手入れも簡単なので便利です。
- 寒冷地の場合:本当に寒い条件下では、厚いダウンジャケットがミッドレイヤーとして最適でしょう。このタイプのジャケットは軽量で、コンパクトに収納できます(バックパックに入れる場合に便利です)。一方、ダックダウンは濡れると断熱性が失われるため、雨天や汗をかきやすい場合には着用を控えた方がよいでしょう。また、ダウンジャケットを洗濯する時は、型崩れしないように注意する必要があります。
断熱性が高すぎるミッドレイヤーを着用すると、熱くなりすぎて汗をかきやすくなります。ミッドレイヤーが濡れると、断熱性が低下し、こもった湿気によって寒さを感じるようになります。

風雨から身を守るウォータープルーフ/シールドアウターレイヤー
風雨から身を守るときすぐに思い浮かぶのはGore-Texのジャケットですが、防水性・通気性の高い他のブランドの生地もあります。防水性能を比較したい場合は、圧力を掛けた水が生地を通過する抵抗をミリメートル単位で計測する防水性試験(シュマーバー評価)があります。例えば、Gore-Texジャケットの試験結果は、28000シュマーバーです。
ウォータープルーフのウエアは、縫い目もウォータープルーフになっています。
生地の通気性は、g/m2/24 hoursで測定されます。Gore-Texブランドでは、RET指数が使用されています(透過による耐熱損失性の測定)。生地の通気性が高いほど、強度の高い運動に適しています。
発汗を抑えるために、ジッパー式のベンチレーションがついたジャケットもあります。
通気性を保ちながらも防風性を確保するために、ウインドストッパー(Gore-tex社)で作られたウエアもあります。
ソフトシェルと呼ばれる撥水性のあるウエアは、とても柔らかくて着心地が良いです。通気性があるので、運動で汗をかいてもすぐに吸収・発散します。撥水処理がされている素材でできているアウターシェルは、気象条件が悪くなっても、小雨やにわか雨、降雪から身を守ることができるでしょう。
気象条件に合わせてレイヤリングを調整する
レイヤリングシステムは悪天候から身を守ると共に、汗の吸収・発散を促進し、不測の事態に適応できます。ドロップイン時の運動強度、気象条件の悪化、高度の変化など、一日の中での気象条件や求める機能は変化することがあります。このような要素を考慮してレイヤーを調整し、必要となりそうなものを全てバッグに詰めて準備してください。
暑い日のトレイルランニングでミッドレイヤーは不要
暑い時はかいた汗を処理するだけです。機能的なベースレイヤーだけで良いでしょう。雨をしのぐアウターレイヤーは必要になるかもしれませんが、暖かくする必要はないので、ミッドレイヤーはなくていいでしょう。
山のハイキングでは気温差に注意が必要
山でハイキングをするとき、いくつかの異なるシナリオに出くわすかもしれません。
- 涼しい早朝:薄いミッドレイヤーを着用しましょう。
- 暑い気候での運動:夏のハイクアップは、標高の高さにもかかわらず暑くなることが良くあります。通気性のあるベースレイヤーを着用しましょう。
- 急な気温低下:山頂に到着してペースを落としたときや、空気が冷たくなることを想定して、バックパックにはフリースや断熱性のあるダウンや合成繊維の詰め物が入ったジャケットなどのミッドレイヤーを入れておくと良いでしょう。
- 下山中の風雨:ソフトシェルまたは防水ジャケットを着用しましょう。寒い場合はジャケットの下にミッドレイヤーを着用します。
スキー/スノーボードでは寒さと風から身を守る
スキー/スノーボードなどのウィンタースポーツをする時は、寒さと風から身を守ることが大切です。長袖のベースレイヤーをおすすめします。
スノージャケットは、断熱素材であるミッドレイヤーと、悪天候から身を守る素材であるアウターレイヤーから構成されています。 ジャケットだけで暖かさが足りない、あるいは寒い場合は、中にフリースのレイヤーを着込みます。
詳しくは、スキー/スノーボードウェアについてのこちらの記事をご覧ください。
ツーリング用のレイヤー
スリーレイヤーシステムは、ツーリングやフリーツーリングに最適です。暑くなるのでハイクアップ中はジャケットをバッグに入れ、滑走の前に着用します。
ウインドブレーカーやウォータープルーフのジャケットは、天気の良い間はバックパックにしまっておいてもいいですが、冬山特有の冷たい風から身を守るためにも着用する方が良いでしょう。もちろん、降雪時でも濡れません。
スリーレイヤーシステムは下半身にも適応できますが、一般的に脚にはあまり汗を書かないので、より簡単です。スノーパンツは断熱性と保護性があるので、直接着用したり、暖かいベースレイヤーを履いてから着用します。夏のハイキングでは、ショートパンツや軽いパンツで十分でしょう。雨や風の強い日には、その上にレインパンツを履きます。
登山道や海岸沿いの遊歩道など、ハイキングに適したコースは身近に見つけることができます。まだ行ったことのない場所に挑戦したり、よく行く場所の周りを探検してみたり、忙しい日常の中でちょっと息抜きのために出かけたり。いつものコースをもう少し先まで進んでみたら、思いがけない景色に出会うかもしれません。
いずれにしても、目的や状況に適した用具を使うことでハイキングは快適になります。目的のフィールドや季節、天候に適したハイキングのための用具選びについて考えてみましょう。必要な用具を見極めて、身軽に自然を楽しみましょう。
ハイキングにはいくつかの種類がある
一言でハイキングといっても、実際にどんな活動をするかによって必要な用具は異なります。用具をそろえる前に具体的にどんなハイキングをしてみたいか(所要時間、距離、登りの長さ、歩きやすいコースかどうかなど)、どんな状況でハイキングをするか(季節、天候など)を考えてみましょう。
ハイキングのフィールドや予想される気象の状況を知ることから、ウェアやシューズをはじめとする用具選びは始まります。
どのくらいの長さのハイキングに出かけるか
半日または日帰りのハイキングについては補給食や携行する水の量が変わる程度で、基本的な用具に違いはありません。一泊以上のハイキングの場合は場合に応じた用具選びが必要になります。
テントや寝袋(シュラフ)、ガスコンロを持って行くか。フリーズドライの食料品が必要か。予備の防寒着も用意するか。いろんなハイキング用具がありますが、背中のバックパックのスペースは限られています。
コースの距離と登りの長さ
計画しているハイキングの難易度を知るためには、コースの所要時間だけでなく、歩くことになる距離と登ることになる標高差が重要です。距離が長くなるほど、または標高差が大きいほど、背中の荷物はできるだけ軽くする必要があります。荷物が軽くなればなるほど、到達点までの脚への負担も軽くなり、よりエネルギッシュに行動することができます。
どんな状況のコースを進むことになるか
「ハイキング」と「登山」の違いは、そのコースを進む難易度の差にあります。ここではもっぱらハイキングに出かける場合について考えることにします。基本的にクライミング・ロープは使いません(とはいえ、一部の場所で安全を確保するために短いハイキング用のロープを使うことはあります)。アイゼン(クランポン)、ピッケル(アイスアックス)、スクリューやスキーといった登山用具を使う場面も想定しません。
ちなみに、バックカントリースキーや雪渓歩きは冬山の専門的な知識や装備を必要とするアクティビティです。
ハイキングに出かける前にコースを決めて行動予定表を作ります。その場の思いつきで難度の高い登山道に踏み込むことはやめましょう。国立公園のようにハイキングで利用が想定されているエリアであれば地形図を入手することができます。もちろんオンラインで探してもかまいません。


季節や天候
ハイキングのためのウェア選びは予想される気象条件に応じて異なります。
- 天候:同じエリアでも山間部と海岸では天候は大きく異なります。寒さや暑さ、雨や日射しから身を守る必要があります。
- 季節:ハイキングに適した天候に恵まれる季節は自ずと限られるものです。同じコースであっても季節によって猛暑となったり酷寒となったり、積雪があったりします。
- 天気:ハイキングを予定する当日や前後の天気予報を確認しましょう。少しでも天気が崩れる可能性があれば、予備のウェアを持っていきます(例えば防水のレインジャケット、ウィンドブレーカー、レインパンツ、着替えなど)。
どんなハイキングでも必要となる基本的な用具
下に挙げる用具についてはどんなハイキングでも必要です。コースの難易度や気象条件に応じて調整します。
- クオリティの高いハイキングシューズ (「ハイキングブーツの選び方」はこちら)
- ハイキング用のバックパック (「ハイキングのためのバックパックの選び方」はこちら)
- 天気に応じたウェア (「スリーレイヤーシステムでの重ね着の仕方」はこちら)
- 日焼けから身を守るアイテム。サングラス (※国内未展開)、キャップ (ウィメンズ | メンズ)、日焼け止めクリームなど。
- 行動中の給水(ハイドレーション)と補給食
- 使い慣れたナビゲーションシステム。例えば紙の地図、コンパス、高度計、スマートフォンの地図アプリ、GPSウォッチ、ハイキング用GPS端末など。
- 緊急時のための備え。ファーストエイドキットのほか、エマージェンシー・ブランケット、ナイフ付きマルチツール、ヘッドランプ、携帯電話など。

ハイキングの状況に応じた用具を選ぶ
どこでいつハイキングをするかを決めたら、次は想定される天気やコンディションに応じて用具を選びます。
装備品
ハイキングに必要な基本的な装備には次のものがあります。
- 高品質なシューズ。コースのコンディションや体力に応じて選びます。
— ウィメンズ | メンズ - バックパック。数時間のハイキングであれば10リットルほどですが、テント泊で数日間のトレッキングをするなら70リットルは必要です。
— バックパック - ハイドレーション。袋状のハイドレーション・バッグやウォーターボトル。ソフトフラスクは常に手の届くところに入れておけます。
— フラスク&リザーバー
必要に応じて次の装備も用意します。
- ストック(トレッキングポール)。使い慣れていれば急な登りで役に立ちます。(※国内展開なし)
- レインカバー。雨の時にバックパックにかぶせます。
- テントや寝袋(シュラフ)、スリーピングマット。数日にわたるハイキングで山小屋を利用しない場合は必要です。
- 寝袋用のライナー・シーツ。山小屋で宿泊する場合に使います。
- マイクロファイバー製の旅行用タオル。
- キャンプ用のガスコンロ、やかんやフライパン、食器セット。これも山小屋を使わず数日間のハイキングをするなら必要です。
- 登山用のハーネス、ロープ、カラビナ。切り立った斜面や岩場に行く予定があるなら必要です。

ウェア
ハイキングでは最初から身につけるウェア選びはもちろん、バックパックに入れていくウェアの準備も重要です。
- ソックス。快適に歩くことができ、靴ずれになりにくいクオリティの高いハイキング用ソックスを選びます。
— ウィメンズ | メンズ - ショーツかロングパンツ。どちらにするかは天気に応じて決めるとよいでしょう。すそを取り外すとショーツになるタイプのロングパンツもあります。
— ウィメンズ | メンズ - 通気性の高い下着。化学繊維またはメリノウールを素材に用いたものがおすすめです。女性は動きやすいスポーツブラも用意します。
- フリースのミッドレイヤー、または薄手のダウンジャケット。早朝や山頂近くは冷え込みます。
— ウィメンズ | メンズ
必要に応じて次のアイテムも追加します。
- 着替えのTシャツ。山頂に着いた後や山から降りてきた後は、汗で濡れて身体が冷えます。
— ウィメンズ | メンズ - 着替えの下着。数日にわたってハイキングをする場合に。
- ウィンドブレーカー、またはレインジャケット。雨が予想される場合に備えて。
— ウィメンズ | メンズ - 防水パンツ。これも雨に備えて。
- ダウンジャケット。気温の低い場面があるなら必須アイテムとなるので、バックパックの底に押し込んでおきます。保温性が高く、小さく圧縮できてかさばらない点が優れています。
- キャップ、日避けの付いたハット、バンダナ、ビーニー・キャップ。天候に応じて、使い慣れたものを用意します。
— ウィメンズ | メンズ - 手袋(グローブ)。これも気温の低い場合に備えて。
— ウィメンズ | メンズ - ゲイター。雪の中を歩く場合や、ローカットのシューズを履く場合に。


ハイドレーションと補給食
行動中に水分を取るためのハイドレーション・システムは、1リットル以上の容量を持つものを用意しましょう。 多くのバックパックには、背中にハイドレーション・バッグを入れるための専用のスペースがあったり、ストラップなどにチューブを通したり留めたりすることができます。気温が高い場合やコースの途中に長時間水場がない区間がある場合には、多めに水を持つ必要があります。
寒い場合の休憩時間のために、断熱材を使ったドリンクボトルや魔法瓶に温かい飲み物を入れておくこともお勧めです。
給水施設のない深い山岳地帯で行動する時は、浄水タブレットか浄水フィルターを持っていきます。
ハイキング中は最初から最後まで、十分な量の食べ物、エナジーバーやドライフルーツを切らさないようにします。それを行動中にこまめに食べることで低血糖症を防ぎます。低血糖症になると行動スピードが落ちてしまうので危険です。フリーズドライの食品はテント泊の食事の楽しみに取っておくか、時間をかけない朝食にするのがおすすめ。そして、予備のエナジージェル、またはエナジーバーをバックパックのどこかに入れておきましょう(ファーストエイドキットの中に入れておくのもいいでしょう)。
ナビゲーション
ハイキングに出かけるときは、必ず事前にコースを決めておくようにしましょう。そしてインターネット検索やガイドブックを使って、可能な限りリサーチをしてから出発します。道案内には使い慣れたものを選びましょう。
- スマートフォンとGPSトラッキング機能を持つアプリ。事前に地図データをダウンロードしておけば、電波の入らない場所でも地図を利用できます。
- GPSウォッチ。高度計・気圧計付き腕時計の代わりになります。
- 等高線の入った地形図。
- コンパスと高度計。最近はスマートフォンやGPSウォッチが普及したため、使われる機会が減っています。



安全確保と緊急時のための装備
ハイキングの途中で起こる可能性のあるトラブルや事故に備えましょう。次のアイテムはかさばらず軽量なうえ、いざというとき役立ちます。
まず、以下のアイテムを基本装備としてそろえましょう。
- サングラス、または日焼け止めクリーム(雨の日は除く)。※国内未展開
- ファーストエイドキット
- エマージェンシー・ブランケット
- ナイフ、またはナイフ付きマルチツール
- ヘッドランプ(必要ないと思われる場合であっても、軽量な非常用ヘッドランプを携行しましょう)
- 充電済みのスマートフォン(緊急連絡先をその中にメモしておく)
- 身分証明書、およびハイキングに同行しているメンバーの数と自分自身の既往症や受けている治療についての情報。これらは万が一事故に遭った場合に非常に有益な情報です。
場合によっては次のアイテムも装備に加えます。
- 暖を取るためのマッチ、ライター、ろうそく。乾燥地でのハイキングの場合は山火事の原因とならないように細心の注意をしましょう。これらの所持や使用が禁止されていることもあります。
- スマートフォンやGPS機器の電池切れが予想される場合は、充電用または交換用のバッテリー。
- 携帯電話の電波が届かないエリアで長時間行動する場合には、衛星通信など双方向通信が可能な携帯電話機またはGPS端末機器。


ハイキング中に衛生面で気をつけること
ポケットティッシュは軽量でかさばらず、緊急時に様々な形で利用できます。
蚊を避けるための虫除け剤を持っておくと、いざというときとても役立ちます。最近ではダニ除けスプレーも使う人が増えています。
最後に
写真撮影や植物・動物の観察、パラグライダーといった趣味の一部としてハイキングをする人もいます。その場合は趣味の道具をできるだけ軽くしましょう(カメラとレンズ、双眼鏡、ノートや絵を描くための道具など)。背中の荷物が重いと歩くのが辛くなってしまいます。加えてハイキング中の動作を妨げることになれば危険です。
崖のそばや岩場などの難所を通る場合、それに短いハイキングに出かける場合にも、独りで行くのはなるべく避けましょう。やむを得ず独りの場合は行き先と行動予定を必ず誰かに伝えておくようにしましょう。ちょっとした心がけが、想定外の出来事が起こったときに命を守ることにつながります。
自然環境を汚さないように配慮しましょう。ハイキングには小さなゴミ袋を用意しておき、自分のゴミはもちろん見つけたゴミも拾って持ち帰りましょう。
ちょっとした気配りをすることで、ハイキングはずっと楽しくなるでしょう。
※イメージ画像に使用されている商品の一部は、現在取り扱いがございません。
初めてトレイルランニングのレースに出る方、おめでとうございます。もっと長い距離、ウルトラトレイルのレースを走ってみたいという方もいるでしょう。プロ・トレイルランナーのフランソワ・デンヌによる、レースを楽しむためのアドバイスを紹介します。
初レースはまず楽しんで
初めてのトレイルランニングのレースでは、自分のタイムとか順位、選手の中でどれくらいのレベルかといったことは全く気にする必要はありません。競争と考えずに、自分の力を試すことや自然の中で過ごす時間を楽しみましょう。
レースに備えてトレーニングを重ねたり、食べ物や食事の仕方を工夫してきたかもしれません。しかしそうした努力のために苦労したり時間を要したことは一旦忘れましょう。そしてレースに備えてトレイルを走って楽しんだことを思い出しましょう。むやみに自分にプレッシャーをかけることはやめて、レースを楽しみましょう。
トレイルランニングのレースに出る人の大半の目標は、一日を楽しく過ごして無事に完走すること。この日のために準備してきたことが報われて、フィニッシュまでうまく走ることができたら、順位など関係なく充実した気持ちになります。それがトレイルランニングの魅力なのです。

あなたの身体からの声に耳をすます
レースを元気に完走するためには、自分の身体が発しているサインを読み取ることができるようになりましょう。ほかの持久系スポーツと同様に、トレイルランニングのレース中は自分の身体がどれくらい疲労しているか、常に気をつける必要があります。
レース中は常に次のポイントについて意識しましょう。
- 自分の身体の調子はどうか、気分よく走れているか?
- スタートから現時点までどんな調子か?
- 補給食や食事、水分補給は順調か?
- 自分の筋肉のなかでいつもと違う感じがするところはないか?つりを感じていないか?痛みをかんじるところはないか?
水分補給や食事は必要だと感じた時にするようにして、必要なら走るペースは落とします。
コース中の登りを全部走る必要はありません。特に登りがたくさんある山岳コースのレースでは全部走ろうとしないように。トレイルランニングではしばしば歩いたほうがいいことがあります。急な斜面を登る場合には、無理に走るよりも早足で歩く方が体力の消費を抑えることができて効率がいいのです。
レース全体については次の言葉が参考になります。
ウルトラトレイルのレースを走ることは、山の中で一日を過ごすことなんだと意識しています。だから普段どおり飲んだり食べたりできることが大事です。フランソワ・デンヌ


脚などの筋肉がつるのは、走っている途中の水分補給が足りないか、レース中にペースを上げすぎたか、あるいは筋肉が疲労したか、といった理由が考えられます。つってしまったらドリンクを少しずつ飲んで次第に量を増やしていきます。そして筋肉の緊張がほぐれるのを待つ間は少しペースを落としましょう。つってしまってもレースを続けているうちに必ず治るものなので、身体が発するサインに注意して対応します。
レースに向けたトレーニングの時から走りながら食べたり飲んだりすることに慣れておきます。レース当日に初めての新しいやり方を試すのはやめましょう。
呼吸の調子を意識する
初レースでは完走することが目標です。あまり頑張りすぎないようにしましょう。特に最初にペースを上げすぎないように気をつけてください。実際、スタートするときの高まった雰囲気に飲まれてオーバーペースになるランナーが多いのです。最初から速いペースで走るとレース後半には体力を使い果たしてしまいます。スタートはゆっくり、周りの選手は気にせずに自分のペースで落ち付いて走りましょう。そうして走っているうちに、スタートから飛ばしていた選手たちを次々と追い抜いていくことができます。
ランニング用の心拍モニターを使えば走っている間も自分の心拍数をチェックできます。他にも自分の呼吸からどれくらいの負荷が身体にかかっているか知ることができます。レースの間は他人と会話ができるくらいの呼吸を保つようにしましょう。これで心拍数を上げすぎることなく、持久運動に適した心拍数の範囲内に維持することができるのです。会話が難しいと感じたら少しペースを抑えましょう。
もちろん、急な斜面の登りでは息が荒くなることもありますが、それは普通のことなので気にしなくて大丈夫。しかし、平坦なところや緩い登りでは補給食や水分を補給しながら走れる程度のペースを守ってください。
下りは気持ちよく走れるスピードで駆け下りましょう。以上のアドバイスを参考にすれば最後まで力を出し切って走れるはずです。
登りとフラットで頑張り、脚の筋肉にダメージを起しやすい下りはセーブする。距離に応じてペースをコントロールし、後半歩き通しにならないよう前半のペースに気を配る。レースではエイドで長く滞在しすぎないよう気をつける。筋肉が冷えて次の動きだしが辛くなるし、折角一生懸命走って稼いだタイムもあっという間に無駄になってしまう。とにかくコンスタントにリズム良く動き続けるのが重要。

NIWA Kaori
フィニッシュまであと少し、ラストスパート!
あなたはレース中のペースに気をつけて、スタート直後にペースを上げすぎることもなく走れました。普段通りに食べたり飲んだりして、身体からの体調のサインも見逃しませんでした。フィニッシュまであと数キロとなり、身体にはまだ力が残っています。さあ、ここからはラストスパートです。
レースをいくつか完走すると、今度は自分の順位や、コースの累積高度、距離を意識するようになるかもしれません。ウルトラトレイルのレースに出てみようと考えるかもしれません。無事にトレイルランナーとしてデビューしたら、次は自分がどこまでできるか挑戦してみてください。そのためにはしっかりと準備してトレーニングも少しずつ増やす必要がありますが、経験を重ねていけば次第に高い目標に挑むことができます。それでも身体の声に耳を傾けて自分に合わせたペースで走れば、いつも笑顔でフィニッシュすることができるでしょう。
トレイルランニングのためにシューズとバックパックの用意ができました。次はバックパックの中に何を入れるか、説明しましょう。このアドバイスを参考に必要なアイテムだけを入れればよく、バックパックをパンパンにふくらませるほどたくさんのものを入れる必要はありません。できるだけ持ち物は軽くして走りましょう

レースに向けた持ち物の準備
一部のトレイルランニングのレースは必携装備品をリストにまとめています。まずはそこに書かれているアイテムを重さに気をつけながら揃え、一度バックパックに入れてみます。それから、レースがどのようなコンディションの中で行われるかを考えてみましょう。さらに、いつもトレイルを走るときに必要とするもので持ち物に加えるべきものはないか、も考えてみましょう。
装備リストをまとめていないレースに出る場合や、レースではなくトレーニングのためにトレイルを走る場合には、自分の身の安全を守るために必要なものは何か、と考えてみます。トレイルランニングでは自分の安全は自分で守るのが原則。走る当日の天気予報がどうなっているか、何時間くらい走ることになるか、いざという時に助けを求めることになる近くの町や集落からどれくらい離れているか、といったことも調べて必要に応じて持ち物を加えましょう。
例えば次のようなアイテムは必ずバックパックに入れておく必要があります。
- 水またはスポーツドリンクが入った500mlのフラスク二本
- 食べ慣れたエナジーバーやエナジージェル
- 天候に応じた防水・防寒着
- サバイバル・ブランケット(どんな時も必ず持ちましょう)
- 水濡れを防ぐ袋に入れた携帯電話
- (必要な場合)トレイルランニング用のトレッキングポール

よく使うアイテムはバックパックの取り出しやすいポケットに入れておき、非常用のアイテムはバックパックの底にしまっておきます。レース中にできるだけバックパックを背中から下ろさずに済むように、工夫してパッキングしましょう。
走りながら足を止めることなく使う水や行動食などは前面のポケットに収納し、それほど使わないけど使うときはすぐに取り出したいウィンドシェルなどは出し入れしやすいジッパーのない横ポケットに収納する。無くしては困るけど、必要なときすぐに取り出したいスマホやファーストエイドキットなどの必携品はジッパーのある横ポケットへ。あまり使わないか、使うときは立ち止まって着る必要のあるレインや防寒着、ヘッドランプは背面のポケットへ入れる。

NIWA Kaori
トレイルランニング中に水分や補給食を摂る
トレイルランニングの途中でどれだけの水分を摂取するか、は非常に重要です。
まず500mlのフラスク二本を左右のフロントストラップのポケットに入れ、気温が高くなると予想される場合には追加でハイドレーション・バッグを背中に入れるようにします。水とスポーツドリンクのどちらを入れるかはあらかじめ決めておきましょう。トレーニングで走る時にどちらをどれだけ飲むのがいいか試しておきます。ただ、片方のフラスクには水、もう一方にはスポーツドリンク、というのが大体の場合にうまくいくようです。
補給食は走っている途中にさっと取り出せるよう、バックパックのポケットに入れておきます。長いレースになるほど、必要な補給食も増えます。トレーニングでも補給食を摂ってみて、走っている途中にお腹でうまく消化されるか試しておきましょう。事前にいくつかの種類の補給食を試しておけば、どれが自分に合うかわかります。
レース中に利用できるエイドステーションの数と次のエイドステーションまでの距離も調べておきましょう。エイドステーションが少なかったり、次までの距離が長ければ、より多くの補給食を用意しておく必要があります。


防水・防寒着を持ち物に加える
天候によってはバックパックの中に追加の防水ジャケットや防寒着を入れておく必要があります。走る前には必ず最新の天気予報を確認するようにします。特に山で走る場合には天気が変わりやすく、あっという間に気温が下がることがあるので、十分な注意が必要です。
雨や暴風雨に備えて、防水ジャケットをバックパックの取り出しやすいところに入れておきましょう。走りながら取り出したり、しまい直したりできるようにあらかじめ練習しておきます。走りながら出し入れできれば、特にレースの場合は無駄な動作を減らせて効果的です。
気温が低い場合や雪の上を走る場合には、保温性の高いシャツやダウンなどの入ったジャケット、帽子やグローブが必要となるのでバックパックに入れるようにします。これらのアイテムは、ランニング中に立ち止まったりペースを落とさなければならなくなった場合にあなたの命を守ります。
加えて猛暑の場合についても考えておきましょう。強い日差しで気温が高くなる場合には追加の防寒着の代わりにハイドレーション・バッグを持ち物に加える必要があるかもしれません。そのほか、キャップやサングラス、日焼け止めクリームも用意しましょう。
身を守るために必要なアイテム
夜間に走る可能性がある場合には、忘れずにヘッドランプを持ち物に加えましょう。バッテリーが充電されていることを必ず確認します。
レースではサバイバルブランケットを必携装備品に指定していない場合もありますが、緊急時にはあなたの命を守ってくれる重要なアイテムです。レースかトレーニングかを問わず、トレイルランニングに出かける場合には必ず装備に入れておくことをおすすめします。
最近のバックパックには携帯電話を入れておけるポケットがあるので、活用しましょう。雨や汗で濡れないよう、防水ケースやプラスチック袋に入れるのをお忘れなく。


トレッキングポールを使うのであれば、バックパックにポール用のクィーバー(収納ケース)を取り付けておくと、取り出したりしまい直したりするのが簡単になります。
トレーニングで走るときにもバックパックを身につけて使い方に慣れるようにしましょう。トレイルを走っている途中に必要となるものはすぐに取り出せるように、パッキングの仕方を工夫してみてください。自分のバックパックのどこに何が入っているか、頭に入っていればレース中に慌てずにすみます。きっと走ることに集中して楽しむことができるはずです。
急な登り、または下りで効率的に前へ進むテクニックの一つは両脚だけでなく両腕も使うことです。
例えば簡単にできるのは、急登では左右の手をそれぞれ太ももに置き、手で太ももを押しながら登りの一歩を踏み出す、というものです。
トレッキングポールも登りで筋力を効率よく使うための道具です。今日ではカーボンファイバーをはじめとする軽量で丈夫な素材を用いることでポールそのものが年々軽量化されています。こうしたポールは二つまたは三つのパーツに折りたたむことができるので、使わない時でも携行しやすくなっています。一度ポールの威力を知ったら、きっとポールなしでは登りたくなくなるかもしれません。
どんな時にトレッキングポールを使うとよいか
- 急な登りを駆け上がる場合に、または歩いて登る場合であっても、トレッキングポールを使うことで体力をセーブできます。
- 起伏が続くトレイルを走る場合にも、ポールを使うことで両腕の力が加わり、使わない場合よりも速く効率的に走ることができます。
- ポールは下りでも役に立ちます。岩や植物のような障害物を避けるほか、走って下る時に身体のバランスを取ったりペースを落としたりすることができます。
- 岩が多いトレイルではポールの先端を岩の隙間に引っかけないように気を付けましょう。引っかかって力が加わるとポールは真っ二つに折れてしまいます。特にカーボンファイバー製のポールは比較的折れやすいので注意が必要です。

実際のポールの使い方
ストラップを使う
ポールを効果的に使うためには、ストラップを正しく使いましょう。ストラップに対して下から上に手首を通してからグリップを握ります。こうすることで、ストラップを通じてよりしっかりと地面を突くことができると同時に、手はグリップを強く握らずにリラックスした状態にしておけます。
足と腕の動きを同期させる
両足で走ったり歩いたりする動きと両腕でポールを突く動きをうまく合わせることでポールを使って効率よく前に進むことができます。
まずは次のような練習をしてみましょう。
- ポールは使わず、両腕を下ろした状態で普通に歩きます。
- 次に両腕を自然に振りながら歩きます。
- 両腕の自然な振り方をキープしたまま、ポールを使います。
- すると脚を振り下ろす動作と同時に左右反対側の手と腕を振り上げているはずです。この状態が脚と腕の動きが同期した状態です。
ポールを使って走る時の3つのテクニック
トレイルランニングで走りながらポールを使うには3つの異なる使い方があります。どんな地面を走っているか、とどんなペースで走っているか、により使い方が決まります。
足とは左右反対側を交互に突く
上記で練習したように、左右のポールの動きは足の一歩の動きと同期します。このため、ポールは足を踏み出すと同時に足とは左右反対側の腕で持ったポールを突くことになります。この時、ポールは足と並ぶ位置に突くようにします。さらに突く際の角度を後ろ向きにすることで、突くと同時に前への推進力を得ることができます。
このテクニックは登りが続いているところを早歩きで進む時に役に立ちます。
左右を同時に突く
急な傾斜を登る場合には左右のポールを同時に突くことで、最大限の力で前に踏み出すことができます。まず両腕を同時に振り上げ、両方のポールを身体の前に突きます。身体を前方に倒しながらポールを地面に押す力の反動で三歩進みます。この動作を繰り返します。
オフセット突きで登りを走る
走る場合に、一歩ごとに交互に左右のポールを突くのは動作が煩雑すぎます。代わって緩い登りで有効なのが左右を同時に突く動作を応用したオフセット突きです。登りを走りながら三歩ごとに左右のポールを同時に突いて前方への推進力を得ます。上記二つのテクニックを組み合わせたテクニックだといえます。
これは長時間の耐久レースに適したテクニックであり、ウルトラトレイルのレースに取り入れれば走れるパートでもポールの力を借りることができます。
下りでもポールは使える
ダウンヒルを駆け下りるのにもポールは便利に活用できます。足を止めることなく、岩のような障害物を避けることができるほか、加速していくスピードにブレーキをかけることができるため太ももの筋肉への負荷を和らげます。このほかにもポールを使って身体のバランスを取ることで、転んで地面に手を突くことも防げます。


ポールの持ち運び方
トレイルランニングの途中で使っていないポールを持ち運ぶ方法はいくつかあります。短い区間であれば手でポールを掴んだまま走ることもできます。しばらくの間使わないという場合はバックパックやベルトに固定しておけば快適なほか、両手をを空けることができるので便利です。
最近のトレイルランニング用のパックにはポールを取り付けるための仕組みが設けてあります。このほかにバッグにポール・クィーバー(収納ケース)を取り付けることができるパックもあります。クィーバーはポールを取り出したりしまったりがすぐにできる点が優れています。小さなアップダウンが連続するようなコースでは有効に活用できる機能です。
さらにポールの着脱がしやすければエイドでの補給のために両手を空けたい場合にも便利です。
※現在、日本ではトレッキングポールのお取扱いがございません。