総距離515kmのトライアスロン「ウルトラマン」を目指して
文:今泉 瑞稀
2024年7月、ずっと憧れていた大会 ULTRAMAN TRIATHLON CANADA に挑戦しました。
『ウルトラマントライアスロン』・・・聞いたことのない方が多いかと思いますが、なんとなく想像はできるでしょうか。その名の通りウルトラなトライアスロンです。IRONMANは聞いたことがある方も多いと思いますが、ULTRAMANの距離はIRONMANのおよそ倍。スイム10kmバイク420kmラン85km総距離は515km、制限時間は36時間です。
ULTRAMANブランドレースは世界3カ所(フロリダ・アリゾナ・カナダ)で開催され、各大会が予選となり、例年11月にハワイ・KONAで行われる世界選手権があります。
挑戦のきっかけ
2018年に当時25歳で初挑戦したIRONMANを完走。その時仲間からIRONMANの次はULTRAMANがあると教えてもらい、その頃からずっと憧れていた大会でした。私のレーススタイルは『ゆるく楽しく』なので、それから6年経った今もお世辞にも速いとは言えない凡人です。速さを求めるのは苦手なので、IRONMANは毎回マイペースに挑戦していて2023年に出場したIRONAMN世界選手権も含め過去4回完走しました。IRONMANにスピードを求めないとなると、次の挑戦は距離を伸ばすしかない・・・とULTRAMAN出場を決めました。
出国前。かなりの大荷物!
レースレポート
ULTRAMANはエイドの設置がないのでサポートクルーが2〜4人必須になります。今回はトライアスロン歴13年のチーフクルー/元プロロード選手のメカニック/現日本代表のロード選手/マッサージ店勤務の母の4人でチームを組みました。
また、使用した車はごく一般的なレンタカーのミニバン。車にはサポートクルー4人の他にスペアバイク・スペアホイール・クーラーボックス・私の補給に加えてクルーのご飯なども積まなければならないのでぎゅうぎゅうな空間で36時間近く過ごしてもらいました。
スイム
スイムは10km1wayで対岸まで湖を一直線に泳ぐコース。湖といってもとても広いので波がある日もあるのですが、レース当日はとても穏やかで良いコンディションでした。カヤックの伴走が必須なのでレンタルしたカヤックに水、補給を積んでスタート。1500mごとに休憩をとりカヤックに捕まって水分・エネルギー補給。練習でもカヤック伴走は2回できたので練習通りに落ち着いて泳げました。
バイク
バイクは420km湖畔や広大な山岳地帯を走るコース。山間部も多かったですがヒルクライムのような本格的な登りはなく、細かなアップダウンが続くレイアウトでした。サポートクルーには車で追走してもらい、30分に1回ほどは会話ができたので氷や水や食料などの補給はスムースでした。
絶景のバイクコース
スムースとはいえ毎回補給を受け取っていると時間ロスにつながるため、今回はお腹に2ℓのハイドレーションを直入れしていました。この走法はトライアスロン界ではメジャーで、禁止されている大会もあるくらいですが、自転車への水分の積載量が増やせて、空気抵抗も良くなります。開催地のカナダ・ペンティクトンは数秒に1度水分を飲みたくなるくらいの乾燥地帯だったのでこの作戦はとても有効でした。あまりにも乾燥していたので途中キャンディも舐めながら走る場面もありました。
バイクコースの名物トラップ
ラン
ランは85km1wayで途中36km区間はダートのコース。標高は800m〜1100mほどがメインで前半登り基調、後半下り基調のレイアウト。日本でいうマイナー林道のような道で店は一切なくキャンプ場や別荘が数軒あるのみ。サポートクルーは1人伴走OKで他のクルーは車で追走するルールだったので、常に伴走してもらいながら車は1kmに1回以上は停まってもらいサポートしてもらいました。
事前情報では前半20kmは伴走NGと聞いていたので、1km毎にクルーに会えるとはいえランニングベストに最低限の補給を入れる予定でしたが、今回はスタートから伴走OKとのことだったのでクルーに8ℓのバックパックを背負ってもらい、隣でサポートを受ける形にしました(このルールは例年の参加人数によって決まるそう)。
練習として普段からトレイルランニングを取り入れていて伊豆トレイルジャーニーにも出場しましたが、今回のコースはITJととても似ていたので、この大会を選択してよかったです。
練習として、トレイルランニングも。
そして、ついに。
ゴールでは数時間前にフィニッシュした選手もクルーも全員待っていてくれて盛大に迎えてくれました。途中辛くなって歩いてしまった場面もありましたが、応援してくれている方々の顔を思い浮かべて最後まで走り切ることができました!
フィニッシュした瞬間の景色は一生忘れません。記録は33時間46分27秒。
レース期間中の天候は晴れ時々曇り/最高気温30℃/最低気温12℃/水温18℃、特にラン中は曇りがちな天候で恵まれたコンディションでした。
クルーも揃って無事にゴール
準備万全すぎたレース
2022年の夏に出場を決め、約2年かけてしっかり準備したので大きなトラブルなくレースを終えることができました。バイク中にパンクが1回ありましたが、メカニックがすぐに対応してくれてロスタイムは10分ほどで済み、バイクとランでは熱中症症状が出てしまい相当な量の氷を消費しましたがしっかり冷やせたおかげで軽度で済みました。
一番大きなトラブルといえば、クルーが出国前に自分のキャリーケースを自宅に忘れたことくらい(笑)幸いレースの必需品は入っていない荷物だったので空港で衣類を調達してなんとかリカバリー。帰国時もロストバゲージがありましたが、後日無事見つかりました。トライアスロンはどうしても荷物が多くなりがちでロストバゲージも起こりがちなので、出国時に起きなくて本当に良かったです。
ウルトラマン挑戦を経て
今回の挑戦は多くの企業様、個人様、そして恵まれたクルーにサポートいただき実現できたので、スタートラインに立たせていただき、そしてしっかり完走ができて本当に良かったです。夢を応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。実は今回、世界選手権の切符もいただけたので(権利は永久に有効)、また数年後に挑戦したいと思っています!
元々スポーツ観戦が大好きだったことから自身も運動をはじめ、『応援することの楽しさ』に加え『スポーツをすることの楽しさ』も教えてもらいました。私は各種目スピードもなく本当に平凡なホビーレーサーですが、そんな私でもULTRAMANになれたので、今挑戦してみたいことがある方は、ぜひトライしてみてほしいです!そして、私に運動するキッカケをくれたアスリートのように、私も挑戦や発信を続けることで誰かのきっかけになれたら嬉しいです。
今泉 瑞稀を支えるサロモンのアイテム
GENESIS
Genesis は、山を駆け抜けるアドベンチャーに最適なランニングシューズ。快適さはもちろん、ダイナミックで俊敏。自信をもった走りを実現します。耐久性に優れ、油断できない道でも正確な足運びを可能にし、険しい登りや、不安定な下りで実力を発揮します。ダイナミックなサポートをもたらすシャーシと確かなグリップを装備した、安心できる一足です。
PULSE 2
Pulse 2 は、ハードなトレーニングやロードランのためのシンプルで革新的なハイドレーションベスト。軽量で安定性に優れ、SensiFit™ テクノロジーにより摩擦を防ぎぴたりとしたフィット。ポケットは手の届きやすい位置で、ドリンクや必需品の出し入れが容易です。リフレクターで視認性も確保。250ml フラスクが付属しています。
今泉 瑞稀
競技:トライアスロン・ロードバイク
スポーツと旅を愛するトラベルサイクリスト。趣味はトライアスロン、マラソン、トレイルランニング、登山、乗馬、スポーツ観戦、等。最近は全国競輪場制覇(20/43)、日本百名山制覇(30/100)に夢中。
IRONMAN(スイム3.8km/バイク180km/ラン42kmの長距離トライアスロン)世界選手権フィニッシャー。
アジアを代表するフリーライドスキーヤー勝野天欄をゲストスピーカーに迎え、今期FWT初参加で総合6位という驚くべき滑りを魅せた大会の裏側や、最新のフリースキー事情など、ここだけでしか見れないムービーなどを交えながら聞くことができるイベントです!
トークセッションやじゃんけん大会なども予定していますので、お近くのかたは是非イベントにご参加ください!
また、イベントにご参加くださった方には、「SALOMON×JEEP タオル」をプレゼントいたします!
イベント概要
▼東京・大阪・札幌で開催!
▼参加費無料
▼各会場事前申し込みが必要です。
■東京会場
2024年8月10日(土) 19:00~21:00
会場 SKISHOP VAIL
定員 20名
■札幌会場
2024年8月24日(土) 18:00~20:00
会場 パドルクラブ大谷地店
定員 20名
■大阪会場
2024年10月4日(金) 19:00~21:00
会場 サンワスポーツ
定員 20名
イベントについての問い合わせ
salomonracing.jp@amersports.com
ソフィア・ラウクリに神戸で聞く:クロスカントリースキーとトレイルランニングの頂点を目指して
Golden Trail World Series(GTWS)は2018年に設立されて以来、トレイルランニングにおける世界の頂点を決めるシリーズ戦としてその存在感を高めています。そのGTWSで2023年の女子チャンピオンとなったのがサロモンアスリートのソフィア・ラウクリです。
アメリカ・メイン州出身でユタ大学のクロスカントリースキーチームに所属、2022年の北京冬季五輪に米国代表選手として出場するなど、スキーヤーとして活躍する彼女がトレイルランニングに取り組むようになったのは2022年のこと。ランニングでも才能を発揮したソフィアはサロモンのトレイルランニングアスリートに加わります。大学を卒業した2023年にはサロモンのクロスカントリースキーチームにも加わり、両方の競技でサロモンと強力なタッグを組むことになりました。
2023年のGTWSではモンブラン・マラソン、シエール・ジナール、パイクスピーク・アセントという欧州、米国の歴史ある名レースで次々に勝利を上げます。ソフィア・ラウクリの名は、あっという間にトレイルランニングでもトップ選手として世界中で知られることになりました。
23歳でクロスカントリースキーとトレイルランニングの両方で世界的なアスリートして活動するソフィアは、2024年のGTWSの開幕戦となった「神戸トレイル」に参加するため来日しました。故障からの回復の状況を見極めた結果、神戸でレースには参加しなかったものの、来日中もジムでのトレーニングに励み、アスリート仲間のレースを見届けた彼女にお話を聞きました。
神戸のトレイルは走れなかったが、日本滞在を満喫
「3週間前にスキーのシーズンが終わったばかりだけど、すぐに切り替えてしっかり走れるはず、冬の間もランニングの練習はしていたから。そう思っていたんだけど。」インタビュー前日の記者会見で抱負を聞かれたソフィアは心残りな様子で神戸トレイルを見送ることを明らかにしました。クロスカントリースキーでは今年1月のイタリア、バル・ディ・フィエンメでW杯での初白星を勝ち取り、充実したシーズンを終えたばかりですが、冬のスキーから夏のトレイルランニングへのトランジションは今年で二度目で、まだ慣れないといいます。
「膝と足首にちょっと不安があって、こういう時に無理にレースをしてシーズンを終わらせたくないと思いました。スキーシーズンの後、4月にレースを走るのは早すぎるんだとわかりました。」
「トレーニング自体は、両方の競技でうまく補い合っていると思います。スキーのトレーニングは持久力を高めるのに役立ち、ランニングのパフォーマンス向上にもつながっています。」
「一番の課題はシーズンの移行期で、スキーシーズンが終わるとすぐにランニングシーズンが始まり、ランニングが終わるとすぐにスキーが始まります。体と心をリフレッシュする時間を十分に取ることが難しいのです。」
「私は負けず嫌いでカオスのような状況も好きだから、スキーとランニングで一年中レースができるのは楽しいです。でも、休養も必要で、レースをしたいのに見送らなくてはいけないのはつらいですね。」
神戸トレイルのレース当日は大会のスタッフに交じって、仲間の選手たちに補給のためのドリンクを手渡しながらレースの様子を見守りました。レースに出られなかったことはソフィアにとって残念なことだったに違いありません。しかし、初めて訪れる日本の印象を尋ねると、目を輝かせていきいきと答えてくれました。
「他のレースや会場だったら、レースを見ているだけで辛く感じたでしょうね。でも日本は他の場所とは全く違う、ユニークでクールな経験ができる場所です。だから、そんなに悲しくは感じていません。」
「他の選手よりも少し早めに来て、神戸の街を歩きました。山の近くにこんな大きな街があって圧倒されました。本物の日本食、神戸ビーフもラーメンも、ケーキも食べて。新しい食べ物を試すのが大好きなんです。温泉も体験しました。自分で検索して調べて、一番近くにある温泉に行きました。スキーでもランニングでもレースのための旅行ではこんなふうにその街を探索する余裕がないのですが、今回は日本の文化を楽しむことができました。」
才能を開花させながらも、現実を受け入れて前に進むことの大切さも知る
初めての日本滞在でグルメや温泉を楽しんだという話しからは、ありふれた23歳のアメリカ人女性のように感じるかもしれません。しかしソフィア・ラウクリは昨年の世界のトレイルランニング・シーンで最も活躍した女性アスリートの一人です。とりわけ、6月のモンブラン・マラソンでは2位のヤオ・ミャオを12分以上引き離す圧倒的な勝利が話題となりました。
「去年は大学を卒業すると、すぐにトレイルランニングのシーズンが始まりました。最初に走ったモンブランは最初から飛ばしすぎてはいけないと聞いていたので、前半は余裕を持って走っていました。それなのに後半の登りの途中では熱中症気味でちょっとフラフラし始めて。きっと誰かに追い越されると思っていたら、後ろの選手は10分以上離れていると知らされました。そこからは必死になって完走したんです。あんなふうに優勝できたのは自分でも驚きでした。」
しかし、モンブランでの優勝は決してまぐれではなかったことを、8月のスイスでのシエール・ジナール、9月のアメリカでのパイクスピーク・アセントでの勝利で証明してみせました。パイクスピークではレース終盤までジュディス・ワイダーのリードを許しながらも、作戦通りに最後の4キロを過ぎてから一気にリードを奪う巧みなレース展開で優勝しています。ただ、11月のイタリアでのGTWSグランドファイナルでは首位を逃して2位にとどまりました。
「2023年は私にとってほぼ完璧なシーズンで、GTWSの三つのレースで連勝できたのはエキサイティングな経験でした。」
「グランドファイナルは自分でもベストなコンディションではないと自覚していました。冬が近づいていてスキーのためのトレーニングにも時間を費やしていましたから。他の選手がしっかり調整していることを知っていたこともあって、グランドファイナルは辛いレースになりました。レースでは常にベストを尽くしたいから残念でした。」
「でも、もし私がベストの状態でグランドファイナルに臨んでそれで負けたとしたら、それも辛かったでしょう。すべてのレースで完璧を求めることはできない。そう考えてからは次のステップに進むための切り替えができるようになりました。」
GTWS、冬季五輪、そしてその先
昨年のトレイルランニングでの成功に満足するだけでなく、思い通りにならないレースでもがく経験もしたソフィアは、今シーズンはどんな目標をその胸に抱いているのでしょうか。
「2023年のGTWSでの成績は自分自身への高い基準になりました。今年はそれを上回ることを目標にしていますが、世界中から強い選手が集まる中で連覇を達成するのは簡単ではありません。でも、私はチャレンジを続けます。」
今回の神戸でのレースをスキップしたことで、GTWSの第3戦となる5月のゼガマ・アイスコリ(スペイン)が彼女にとってのシーズン開幕戦となります。その後は昨年自らの飛躍の舞台となった6月のモンブラン・マラソン(フランス)、8月のシエール・ジナール(スイス)へと転戦します。そして秋になれば再びクロスカントリースキーのシーズンを迎えます。
「スキーヤーとしては、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪が当面の目標になります。ただ、スキーだけでなく、ランニングと両方で強い選手になりたいという気持ちを持っています。」
23歳のアスリートにさらにその先の目標を聞くのはまだ酷かもしれません。ソフィアは「特にランニングの方は自分でもまだ初心者だと思っていて、長期的な目標は思い浮かばない」といいながらも、自らの将来について話してくれました。
「二つのスポーツに並行して取り組んでそれぞれで最高のパフォーマンスを発揮できることを証明したいと思っています。それができたら、スポーツ選手としての私のキャリアの中で最も誇りにできる成果になるに違いありません。」
トレイルランニングとクロスカントリースキーという二つのアウトドアスポーツの両方で挑戦を続ける。そんな目標を共有して、ソフィア・ラウクリとサロモンはさらなる高みを目指します。彼女の今後の活躍に期待が高まります。
ソフィア・ラウクリを支えるサロモンのトレイルランニング・アイテム
S/LAB PULSAR 3
S/LAB Pulsar 3 は、短距離の激しいトレイルレースで高速の走りを実現します。軽量でダイナミック、かつクッション性に優れたこのシューズは、不確かな地面をどんなに速く走っても、最適なグリップと正確な足運びを可能にします。足の動きに合わせてフィットする革新的なアッパーデザインとレーシングシステムの快適な履き心地も魅力です
S/LAB PULSAR 3
S/LAB Pulsar 3 は、ショートランの水分補給に最適な軽量でシンプルなベスト。250ml ソフトフラスクが付属した 2 つのフロントポケット、バックに 500ml フラスクやジャケットが入るハイブリッドポケットなど、さまざまなニーズに対応します。SensiFit™ と Quick link で体にぴたりと密着し、安定感抜群です。
笑顔で限界に挑むウルトラランナー、コートニー・ドウォルターが6年ぶりの日本で話したこと
2024年4月、サロモンアスリートのコートニー・ドウォルターが富士山麓で開催された100マイルのトレイルランニング・レース「マウントフジ100」に参加するため来日しました。昨年はウェスタン・ステイツ、ハードロック100、そしてUTMBという世界中のトレイルランニングファンが注目する夏の三つの100マイルを相次いで制する偉業を成し遂げたコートニーは、世界最強のトレイルランナーだといっても過言ではありません。
今回のマウントフジ100では2018年に続いて二度目の優勝を果たした彼女に、レースの前後に話を聞きました。
「あの時、最後までプッシュしていたら」と富士山に再挑戦
コートニー・ドウォルターはアメリカ・ミネソタ州出身。学生時代から陸上競技やクロスカントリースキーの選手として活躍していました。コロラド州デンバーで教師をしていた2016年に初めての100マイルレースで優勝し、トレイルランニングでその才能を発揮するようになります。翌年にはサロモンのアスリートチームに加わって、24時間走の米国新記録や240マイルの超長距離トレイルレースで男女総合優勝を果たします。コートニーが2018年に富士山にやってきたのは、アメリカのウルトラランニング界でルーキーとして注目されていた時でした。
「2018年にこの大会を完走(注・23時間57分で優勝)して素晴らしい経験ができました。でも私にとっては本当にタフなレースでした。80マイル(約128km)地点で体力的にはレースは終わってしまっていて、あとは何とかフィニッシュまでサバイブすることしか考えられませんでした。」
「そういう苦しい思いをしたあとは『あの時、自分が最後までずっとプッシュし続けることができたらどんな結果が出せただろう』と、未知の可能性についていつも考えるんです。そして、もう一度あのレースに戻ってもう一度挑戦してみよう、過去の経験を生かしてもっといい結果を出してみたい、と思うんです。」
でも、過去のレースでの心残りだけが再び日本を訪ねた理由ではなかったようです。
「マウントフジは足はもちろん頭も使って走らなくてはいけない難しいレースです。夜の間ずっとハイペースで走り続けたと思ったら、今度は急な登りがやってきます。今年はうまくスケジュールに組み込むことができてよかった。」
「前回、ケビン(夫)は一緒に来ていません。彼にも富士山の素晴らしいトレイルや大会に集まる人たちとのふれあい、それに美味しい食べ物を経験してもらいたいと、ずっと考えていました。」
世界の名だたるトレイルランニング大会で勝利を重ねるようになってからも、日本はコートニーにとって再び自分の力を試し、文化に触れて、コミュニティと交流してみたい場所でした。
ライバル不在でも圧倒的な記録を残したコートニーが目標にしたこと
コートニー・ドウォルターは2018年に続いて今年のマウントフジ100で二度目の勝利を上げました。しかしその勝利は前回と比べると桁違いの内容です。スタート直後から女子のレースをリードし続けただけでなく、コースを進むにつれて前を走る男子選手を一人また一人と追い抜き続け、最後は男女を通じて3番目のフィニッシャーとなっていました。タイムは男子優勝選手に11分差まで迫る19時間21分。コースが多少異なるものの、前回の自身のタイムを4時間半も上回りました。
「100マイルのレースでは、必ず完走できるとは限りません。まずは、フィニッシュゲートまでたどり着けたのは幸運でした。その上で2018年に走った時と比べるなら、この6年間の経験を通じて100マイルを走る能力を向上させることができました。」
大会会場で話しかけられれば笑顔で応え、記念写真に応じる。レースを走っている間も、周りの選手やエイドのボランティアや応援の人たちの声に「アリガトウ」と日本語で返す。いつみても楽しそうに走る姿は2018年から変わりません。しかし、今回のフィニッシュの直後はしばらく誰とも話せず、暖かい夜にもかかわらず青ざ
めて寒さに震えていました。二度目の優勝は確実であっても、妥協することはなかったことがわかります。一体どんな思いで走っていたのでしょうか。
「全力を出し切ってこれ以上は何もできないという状態でフィニッシュする。どんなレースであってもそれが私の目標です。今回もその目標を実現できたと思います。」
「このコースは本当にタフで、登りと下りの繰り返しに加えて、それらをつなぐロードセクションも多いので、あらゆる筋肉が酷使されます。特に後半は登り下りがますます頻繁で急になり、そこをすっかり疲れた脚で臨むことになります。ゴールを考えずに目の前の一歩一歩に集中することを心がけました。」
過酷な場面こそ笑みがこぼれる
誰かと競争することよりも、自分がどこまでできるか試すことが大事。それは言うことは簡単ですが実践することは難しいことに違いありません。日々のトレーニングにコートニーの強さの秘密があるのではないか、との質問にはこう答えてくれました。
「私はコーチもいないし、トレーニングプランもありません。でも、自分の身体が週にどれだけのトレーニングをこなせるか、どのタイプのランニングが好きか、この数年間でわかってきました。毎日、自分の脳と脚の感覚をチェックして、そこから走る距離や強度を決めています。」自分自身と正直に向き合い、体調や感覚を尊重しながら適切なトレーニングを重ねていくのだといいます。強さの秘密を探ろうと質問を重ねるうちに、心と身体の関係について話してくれました。
「私はたとえ最も過酷な場面であっても、そこから喜びを感じることができると信じています。だから、最も辛い瞬間に微笑むことは私には自然なことです。」「100マイルのような長距離レースでは、肉体的な強さと同様に、精神面の強さが非常に重要になります。レース中は、ネガティブな考えにとらわれたり、ゴールまでの距離や脚の疲労を考えたりするのではなく、マントラ(心の支えとなる言葉)を唱えることで、脳を前向きで生産的な状態に保つようにしています。」単なる我慢ではなく、自らを厳しく律しながらも心と身体が発するサインを冷静に受け止めて判断する。レース中の困難な状況を積極的に受け止める。自分と向き合い対話する。こうした精神的な強さがコートニーを今日に導いたのでしょう。
成功を収めた今も、限界に挑戦し続ける
UTMBやウェスタン・ステイツだけでなく、世界の名だたる大会で成功を収めた今、コートニーは自分の目標を見失うことはないのでしょうか。そんな心配は無用なようです。
「人間が肉体的、精神的に何ができるのか興味があります。だからこそ、常に前に進み、新しいことにチャレンジし、不可能だと思えることを見つけ出すことができます。」コートニー・ドウォルターの本質は、明るい笑顔の裏側で自らの限界に挑み続ける強い精神力を持ち合わせていることにあります。そして記録や順位に囚われることなく、常に新しい挑戦を探っている。これからも彼女の歩みは、多くの人々に希望と勇気を与え、可能性への挑戦を後押ししてくれることでしょう。
コートニー・ドウォルターを支えるサロモンのトレイルランニング・アイテム
S/LAB GENESIS
S/LAB GENESIS は、コンペティションへのこだわりから解放されたシューズ。レース仕様の抜群のグリップと優れた保護力、快適さを備えていますが、自己最高記録よりも共有経験を積み重ね、数値ではなくアドベンチャーとして距離を語れるような、トレイルランニングの新しいアプローチを提案します。
S/LAB ULTRA 10
ウルトラランニングのための最高の性能基準をも上回るよう設計された S/LAB Ultra 10 は、身に着けていることを忘れてしまうほどの軽さと快適さが特長。François d’Haene にインスパイアされ、彼との共同開発により誕生したウルトラレース専用のこのベストは、Salomon 最軽量の製品。必需品や大容量ハイドレーションフラスクを収納できるアクセスしやすい収納ポケットを多数備えています。
サロモンのデッキチェア等が抽選で当たる!
サロモンのメンバーシッププログラム「S/PLUS」をご登録頂いた方を対象にサロモンオリジナルノベルティを抽選で20名さまにプレゼントします。
2024/25シーズンデジタルカタログ
Trail Open Air Demoに出展
2024年4月6日、7日に東京の青梅で開催された「Trail Open Air Demo 10」(以下TOAD)。毎年4月に開催されるTOAD、今年は76のブランドが集結。各ブランドの新商品をいち早く見たり、実際にシューズ等を試したりもできるので、特にトレイル・アウトドア愛好家の方々が楽しめるイベントです。そのTOADに2日間サロモンブースを出展し、1日目にはサロモンアスリート2名と一緒に3時間リレーに参加してきたので、今回はその様子をお届けします!
Trail Open Air Demo 10
今回のTOAD では、新作シューズのGENESIS、S/LAB PULSAR 3、SENSE RIDEの試し履き、さらにS/PLUS会員の方にノベルティーをプレゼントしました。4月6日の3時間リレーでも、多くの方にシューズを試していただきました。こちらのリレーの様子は後ほどご紹介します。
ちなみに翌日4月7日には、TOADの会場で青梅高水国際トレイルランのレースも同時開催。このレースでも、テストシューズを履いて出走された方も何名もいらっしゃいました。
実際にシューズを履いてレースに出たり、トレイルで試すことができる機会はなかなかないので、貴重な機会になったのではないでしょうか。
Team Salomonの3時間リレー
The First Trail
TOAD1日目にイベントとして開催された「The First Trail」。親子トレラン1周(約1kmコース1周)、親子トレラン2周、ひよこの部(42.195m徒競走)の他に3時間トレイルリレーがあり、Salomonからは2チームが出場!
サロモンアスリートの高村貴子選手率いる「Salomon Tokyo Community Red」、松本祥汰選手率いる「Salomon Tokyo Community Blue」です。
3時間トレイルリレーは2kmを周回し続ける種目で、カテゴリーは一般の部 / 混合の部 / 女性の部 / ソロの部がありました。
今回は混合の部で参加してきました(混合の部出走は全30チーム)。
朝方の雨で地面が濡れていましたが、みんな勢いよくスタート!
1周2㎞と短いですが、スタートしてすぐ登りがあり、少し平坦を走ると次は下りになるという、全力で走るときついコースです。
アスリートと一緒に走る機会はなかなかないので、交流しながらリレーを楽しみました。
即席のチームで、当日に初めましてのメンバーももちろんいましたが、Redが6位、Blueが9位と上位に入ることができました。
皆様ありがとうございました!
参加者の方が履いていたシューズは、今期の新作シューズ「GENESIS」。
かかと側面にプレートが入っており、横ブレを防いでくれます。
参加者の方からも
「グリップ感やボールド感が良く、テクニカルなトレイルでも使える良いシューズでした」
「クッション性、安定性、グリップとも良かったです。グリップに関しては、少し酷な条件下(路面がぬれていた)でしたが、しっかりグリップしてくれたので良かったです」
といったコメントを頂くことができました。
GENESISはリレー以外でも一番人気のシューズで、サロモンブースで多くの方に試していただくことができました。
サロモンは今後もシューズの試し履きだけではなく、アスリートと交流できるようなイベント等も開催していきますので、皆さまのご参加お待ちしております!
今後のイベントの詳細
上記のいずれかからご確認ください。
※イベントの参加にはS/PLUSの会員登録を必須とさせていただいております。
会員登録はこちらから:https://salomon.jp/pages/s-plus
FOCUSED ITEM
S/LAB PULSAR 3
S/LAB Pulsar 3 は、短距離の激しいトレイルレースで高速の走りを実現します。軽量でダイナミック、かつクッション性に優れたこのシューズは、不確かな地面をどんなに速く走っても、最適なグリップと正確な足運びを可能にします。足の動きに合わせてフィットする革新的なアッパーデザインとレーシングシステムの快適な履き心地も魅力です。
GENESIS
Genesis は、山を駆け抜けるアドベンチャーに最適なランニングシューズ。快適さはもちろん、ダイナミックで俊敏。自信をもった走りを実現します。耐久性に優れ、油断できない道でも正確な足運びを可能にし、険しい登りや、不安定な下りで実力を発揮します。ダイナミックなサポートをもたらすシャーシと確かなグリップを装備した、安心できる一足です。
板橋 黎華/Itabashi Reika
・Salomon marketing Team
社会人になりトレランを始め、休日はアルプス縦走、テント泊など山でのアクティビティーを楽しんでる。
【高尾】KOBE TRAIL Simulation Trail
今回は3月30日に東京 高尾で開催したイベントの様子をお届けします!
KOBE TRAIL Simulation Trail とし、4月20日、21日に神戸で開催されるKOBE TRAILの練習になるようなコースを走るおよそ10kmの工程になりました。
KOBE TRAILは4月20日(土)と21日(日)に開催される、 「六甲山地」を舞台とした都市型トレイルランニング・エンターテイメント・フェス。
20日のGolden Trail World Seriesのコースは、21km 累積2100mと急登の続くコースです。KOBE TRAIL詳細
そのシュミレーションコースとして、急登で有名な北高尾のコースを、サロモンアンバサダー菅谷選手のアテンドとして走ってきました。
当日は気温も高く、トレラン初めての参加者も多かったこともあり、ペースを合わせて登り・降りのアドバイスを重点的に行いました。
また、今回、高尾山口から徒歩5分の高尾ベースを拠点にしました。高尾ベースでは、Salomonのテストシューズレンタルができます!
さて、まずは高尾ベースをスタートし、1kmで山に入ります。スタートから急登です。
急登を登り切った先にはお地蔵さまがいます。登った先で、登りに有効なストレッチ。
写真のような根っこの多い急登が続きます。
背筋をまっすぐにするストレッチ
5km程進むと富士見台に到着
この日は天気がとても良かったので、富士山がきれいに見えました。
下山してからは高尾の公園に移動しみんなで大繩。
大人になってから大繩をする機会はなかなかないので、最初はリズムが取れず引っかかっていましたが、慣れてくると連続で飛べるように!
トレランをする際に必要な力が縄跳びで鍛えられるようです。
走るだけではなく縄跳びの練習も取り入れるとよりトレランが速くなる!?
参加者の方が履いていたシューズは、今期の新作シューズであるS/LAB PULSAR 3とULTRA FLOWです。
菅谷選手のイベントでは、トレランの講習だけでなく、トレランに有効なストレッチや面白い補給食など、多岐にわたることを学べます。
Salomonイベントではバックパックやシューズをレンタルができることも多いので、トレラン用品をお持ちでない方も気軽に参加していただけます。
始めるきっかけが掴めない方、トレランはハードルが高いと感じる方も、一度イベントに参加していただくとトレランの楽しさを感じていただけるのではと思います。
次回も皆さまのご参加をお待ちしております!
今後のイベントの詳細
上記のいずれかからご確認ください。
※イベントの参加にはS/PLUSの会員登録を必須とさせていただいております。
会員登録はこちらから:https://salomon.jp/pages/s-plus
FOCUSED ITEM
S/LAB PULSAR 3
S/LAB Pulsar 3 は、短距離の激しいトレイルレースで高速の走りを実現します。軽量でダイナミック、かつクッション性に優れたこのシューズは、不確かな地面をどんなに速く走っても、最適なグリップと正確な足運びを可能にします。足の動きに合わせてフィットする革新的なアッパーデザインとレーシングシステムの快適な履き心地も魅力です。
ULTRA FLOW
ロードランニング用のクッション性を持ちながら、トレイルのために作られたかのようなシューズ。優れたクッション性と厚めのスタックハイトが特長の Ultra Flow は、走る頻度や距離にかかわらず、アスファルトから未舗装路への切り替えを楽にこなします。アッパーのソフトな素材と混合地形対応のアウトソールを組み合わせ、抜群の適応性を実現した一足です。
板橋 黎華/Itabashi Reika
・Salomon marketing Team
社会人になりトレランを始め、休日はアルプス縦走、テント泊など山でのアクティビティーを楽しんでる。
TRAIL RUNNING & BBQ EVENT in 石岡
今回は11月12日に開催したイベントの様子をお届けします!
この日は茨城県石岡市のトレランコースにてイベントを開催。
いしおかトレイルラン・常陸國トレイルランレースでも使われているコースも通り、およそ11kmの行程となりました。
今回はサロモンアンバサダー菅谷選手がコーチということで、トレイルでの効率のよい走り方、トレイルに活かせるトレーニングも取り入れ、充実した内容になりました。
朝日里山学校に集合し、9:30スタートです。
前日から大幅に気温が下がり、小雨もパラついていましたが、ロードを走って体を温めます。
マウンテンバイクも通行可能なトレイルなので、滑りやすい路面に気をつけながら進みます。
登りきった後は剣ヶ峰広場で皆さんと集合写真です。
イベントに参加していただくとトレイルに必要な体の使い方などたくさんアドバイスがもらえます!
菅谷選手による峠走レクチャーの様子
レクチャーを踏まえて各自のペースで峠走です。
普段であればここでイベントは終わりですが…
今回は年末の特別編ということで、走った後にBBQ &大人のジャンケン大会で盛り上がりました!
BBQの〆の焼きそば
ジャンケンで特別な景品をゲット!
トレイル、ロードと色々な路面を体験できるコースで、トレラン初心者から経験者まで楽しめる内容でした。
始めるきっかけが掴めない方、トレランはハードルが高いと感じる方も、一度イベントに参加していただくと、トレランの楽しさを感じていただけるのではと思います。
皆さまのご参加、お待ちしております!
ありがとうございました。
今後のイベントの詳細
上記のいずれかからご確認ください。
※イベントの参加にはS/PLUSの会員登録を必須とさせていただいております。
会員登録はこちらから:https://salomon.jp/pages/s-plus
FOCUSED ITEM
THUNDERCROSS
Thundercross は、優れたグリップと正確なホールド感で、弾むようなダイナミックなライド感を実現するトレイルランニングシューズ。アグレッシブに地面をとらえる 5mm のラグが、どんなにテクニカルなトレイルにも、滑りやすい厄介なコンディションにも対応。フレンチアルプスで開発されたこのシューズは、起伏の激しい地形から岩の多い斜面、ぬかるんだ狭い道まで、あらゆるトレイルで検証済みです。
仮屋崎 拓 / Taku Kariyazaki
・Salomon Retail Team
アメアスポーツジャパン入社を機にトレイルランニングを始める。
フルマラソンサブスリー&100mileレース完走を目指し鍛錬中。
Salomon Store Shibuya Running Event part 2
渋谷駅から徒歩5分、明治通り沿いに位置する「サロモンストア東京渋谷」。
サロモンのシューズやギアをお買い求めいただけるのはもちろんのこと、実はランニングイベントも開催しています。
今回は12月に開催したイベントの様子をお届けします!
12/5 Salomon Store Shibuya Run
12/5に年内最後となるストアグループランを開催しました。(12月は1回の開催)
この日はかなり冷え込みましたが、4名の方にご参加いただきました。
代々木公園前のイルミネーション
今回は週末にレースが控えている方が多かったため、強度を下げて、代々木公園内を1kmあたり5分半のペースで3周(1周1.1km)走りました。
写真でこの日のランニングの様子を一部お届けします。
この日は今期新作のロードランシューズDRX BLISSを試し履きしていただきました。
シューズを貸し出している日も多くあるので、仕事終わりにそのままシューズを履き替えて走っていただけます。
サロモンシューズを履いて走ることができる貴重な機会、気になる方はぜひご参加ください!
ありがとうございました。
渋谷店グループランは平日の夜に開催予定です。
今後もバージョンアップを重ねていきたいと思います。
皆さまのご参加、お待ちしております!
今後のイベントの詳細
上記のいずれかからご確認ください。
※イベントの参加にはS/PLUSの会員登録を必須とさせていただいております。
会員登録はこちらから:https://salomon.jp/pages/s-plus
FOCUSED ITEM
DRX BLISS
渋谷のランイベントではサロモンのロードランニングシューズもお試しいただけます。
快適さと同時にさらなる安定性を求めるランナーの期待に応える DRX BLISS。十分な高さとソフトなクッション性を備えたこのシューズは、エネルギーを導き必要なサポートをもたらす Active Chassis を採用。ぴったりフィットしたカラー周りが、足を快適にしっかりとホールドし、自信に満ちた楽しい走りを実現します。
仮屋崎 拓 / Taku Kariyazaki
・Salomon Retail Team
アメアスポーツジャパン入社を機にトレイルランニングを始める。
フルマラソンサブスリー&100mileレース完走を目指し鍛錬中。
鷲を追いかけた、長い夏休み
「私には夢がある。それは、いつの日か ── 」
これは、誰もが一度は目にしたり耳にしたりしたことがあるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)の演説の一節です。
そう、私には夢がある。それは、いつの日かWestern States Endurance Run(WSER)を走り、Grand Slam of Ultrarunningの称号を得るという夢である。
トレイルランニングを始めたころに漠然と思い描いていた夢に挑戦する機会が、2023年に巡ってきたのです。WESRにエントリーし続けて、10年。エントリーチケットは、気がつけば256枚(はずれるたびに、チケットの枚数が、1枚が2枚、2枚が4枚と増えて、エントリーし続けると当選しやすくなるシステムになっています)。自分には縁がないのかもしれないと思えるくらい、チケットは途方もない枚数に膨れ上がっていました。
が、ようやく、ようやく出走する権利を手にすることができました。ちなみに、2024年のロッテリーが12月のはじめにありましたが、256枚も持っているランナーは3人しかいませんでした。
10年越しの夢
なぜこれほどまでに、WSERを走りたいのか。それは、アメリカ最古の100マイルレースと言われていることが理由のひとつです。そして、最初に開催された年が、自分の生まれ年と同じ1977年であること。単なる偶然ですが、勝手に縁を感じてしまっているのです。
Grand Slam of Ultrarunningは、このWSERを含め、Old Dominion、Vermont、Leadville、Wasatchという、アメリカの100マイルレースのなかで歴史のある5レースのうち4レースを完走すると得られるタイトルです。プロトレイルランナーの石川弘樹さんがもつ、鷲のトロフィーで知っているトレイルランナーの方も多いと思います。 自分はWSERを走り、かつ5レースすべてを完走して、Grand Slam of Ultrarunningのタイトルを獲得することを目標において走ることを決めていました。
100マイルレースを5本走るということだけでもそれなりの覚悟がいりますが、このグランドスラムは6月から10月の3.5カ月間で5本の100マイルレースを走らなければなりません。レースの間隔は長くて3週間、だいたいが2週間程度しかない過酷な挑戦です。
加えて、日本に住む自分にとっては、その都度、渡米しなければなりません。体力的にはもちろん、経済的にもなかなかハードな挑戦でもあります。自分としては、100マイルを5本ではなく、3.5カ月間をひとつのレースと捉えて走るマインドで臨むことを決めました。
スタートラインに立つ
このグランドスラムを走るにあたって最初の懸念が、リカバリーでした。1月にHK4TUC、3月にBarkley Marathonsを走って酷使した身体を、4〜5月の約2カ月でどこまで状態を戻せるのか。途中、彩の国のペーサーや自分が運営する100マイルチャレンジ「T.D.T.」などもあり、じっくり身体を休めることは難しい状況でした。グランドスラムのスタートのレースは、T.D.T.の2週間後に開催されるOld Dominionです。
アメリカ東部バージニア州で行われる歴史ある100mileレースです。WSERに次いで2番目に古いと言われている100mileレースですが、WSERが山火事などで中止になっていることがあるので、実は開催回数は最も多いレースなのです。
ここでは、Barkley Marathonsを走るようになるまで、毎年のように参加していたハワイの100マイルレース「H.U.R.T100」で知り合ったアレックスの家を拠点にし、レースに臨むことができました。コースはほとんどが林道とロードですが、時折、アメリカの懐かしい「ザ・田舎」といえる農家の裏庭や牧場を通り抜けていきます。コースの雰囲気は抜群です。
グランドスラムに挑戦するにあたり、グランドスラマーになるだけではなく、4レースでサブ80、5レースでサブ100を目標に定めていました。その目標達成のために、Old Dominionはサブ18をめざして走ります。
しかし、フタを開けてみると、ここまでのタイトなスケジュールが響いたのか、時差ボケからか途中で眠くなって、ペースダウンしてしまい、カフェインピルを飲んでどうにか乗り切り、18時間52分で2位でフィニッシュ。結果とは裏腹に、かなり暑い気候もあって、途中で固形物を受け付けなくなり、ジェルだけで凌いだり、歩きを積極的に入れて涼しくなってから勝負を仕掛けたりする辛抱のレース展開でした。
ただ、とにかくグランドスラムのスタートが切れたこと、苦しいなりにまずまずのタイムでフィニッシュできたことを、次のレースWSERに繋げていくことに頭を切り替えます。そう、次は夢にまで見たWSERなのだから。
WSERを走る
10年越しの願いを叶える時が、ようやく訪れました。WSERでは、 “アメリカの父” ことクニさんに、お世話になり、クニさんのホームトレイル「Cardiac Trail」を走ったり、レース序盤の雪が残っているエリア(今年は残雪が多かった)をチェックしたりして、リラックスしながら時差や気候に身体を慣らしていきました。
これまで走ってきた100mile、これから走るであろう100mileのどれもが思い入れ深いレースやチャレンジになることは間違いないですが、そのなかでもWSERは、僕の夢であるBarkley Marathonsと並んで特別な存在です。
10年待ち望んだレースは、10mile進んだら「あ〜、あと90mileしか走れない」と思うくらい、ずっと続いていてほしいと感じていました。目の前に広がる光景は、繰り返し観たドキュメンタリー『Unbreakable: The Western States 100』の世界そのもの。ここはあのシーンの、ここは……と思いながら走っていました。
今年は、レースの象徴的ポイントのひとつNo Hands Brigdeにエイドがなかったのが残念ですが、20時間19分59秒は夢心地でした。スタートからしばらく続く残雪エリアが思うように進めなかったので、目標としていたサブ18には及びませんでしたが、充分に力を出し切ることができたと思います。
それはレース後半を素晴らしいペーシングで導いてくれたペーサーのブランドンのおかげでもあります。トレイルを走るランナー同士、初めて会ったとは思えないくらい波長が合って、またいつか一緒にトレイルを走りたいと思える仲間がまた一人増えました。そして、新しいランナー仲間を繋いでくれたマリコさんにも感謝しかない。
ハリケーン襲来
ウルトラランニングをやっていると、ほぼ100%思い描いた通りになることはありません。大なり小なりのトラブルはつきもので、それをどのように乗り越え、ゴールに辿り着けるかを楽しむ競技だと思います。そういう意味では、3戦目のレースであるVermont100は自分にとって試練となるレースだったのだと思います。
それは、渡米2日目のことでした。Vermont100の開催地にハリケーンが直撃し、レースがキャンセルになってしまったのです。
ちょうど自分は、Barkley Marathonsでいつもサポートをしてもらっているアナトーリの家のテレビで映像を見ていて、被害は甚大でレースどころではないのは、映像からも見て取れました。ただ、これでグランドスラムを完全制覇する夢は終わってしまうのか……とショックを受けていました。
ただ同時に、過去にも似たようなことがあり、2つのレースが代替レースに認められていたことを思い出し、気がついたらウルトラサインアップで滞在中に参加できる100マイルレースを探していました。
エントリーできそうなレースはひとつだけ。Devil’s Gulch。さっそくレースディレクターに参加させてほしいとメールをすると、快く受け入れてくれました。
アナトーリは、まだLeadvilleとWasatchが残っているから少しでも体力を温存したほうがいいとアドバイスしてくれました。確かにそれが賢明な選択
択かもしれない。もちろん、ハリケーンの被害は空港にも及んでいて、そのレースの場所まで飛行機が飛ぶのかさえ不確かな状況でした。
「自分は何がしたいのか」。ずっと自問自答を繰り返しました。
その答えは、Devil’s Gulchを走るということでした。自分の決断に呆れるアナトーリに空港に向かってもらいました。途中のガソリンスタンドも停電しているような状況で、空港へ移動中のクルマの中から航空会社への電話も繋がらない。
空港で待ち続けると、ハリケーンがどこかへ行き、4時間遅れで飛行機が飛んだのです。もしあのとき電話がつながってフライトをキャンセルしていたら、どこかで引っ掛かりを残したまま、グランドスラムを達成したことになっていたのかもしれません。
レースは23:54:44で1位フィニッシュというおまけつき(完走者は3人でした)。のちにグランドスラムのレースとして、無事に認定されました。
試練のLeadville
第4戦の開催地Leadvilleという村は、標高3120mあたりにあります。富士山でいうと「太郎坊」くらいから走り始めるイメージです。トレイルランニングは、日本もそうですが、宿の数が限られているので、その確保は一筋縄ではいきません。とくにLeadvilleは、出走者が800人とアメリカのウルトラのレースでも最大規模のレースで、会場から遠い場所でないと宿が空いていない状況でした。
「オレの部屋に泊まれよ」。そう声をかけてくれたのは、Old Dominionのゴール地点で知り合ったジャレッドでした。Old Dominionの会場でグランドスラムの話をしていると、宿がないなら一緒に泊まろうと声をかけてくれたのです。彼には、空港まで迎えに来てもらったり、ペーサーを務めてくれたネイトを紹介してくれたり、さまざまな面でサポートをしてもらいました。
ネイトとは初対面でしたが、初めて会ったとは思えないほど共鳴するところが多かったのは、同じウルトラランナーということもあるのでしょう。レース当日は、彼のお子さんの誕生日でしたが、日本からぼくが来ること、そしてグランドスラムをサポートすることを伝えたら、快く送り出してもらったと話してくれました。
Leadvilleでは、慣れない高地でのレースに苦しめられ、前半に潰れてしまう有様。でも、距離の長いウルトラに浮き沈みはつきものです。進み続けていると状況は変わります。後半はどうにか持ち直し、サブ24(23:31:18)でフィニッシュ。目標としていたサブ20には及びませんでしたが、最終的な目標はグランドスラム達成と全レースでサブ24。結果としては充分です。
ファイナルアンサー
いよいよ最終レースのWasatch。グランドスラムは5レース中4レース走ればいいのですが、必ずWasatchを入れなければならないので、このレースに失敗するとすべてがダメになるということ。開幕戦のOld Dominionでも、憧れのWSERでも感じることがなかった緊張感に包まれていました。
Wasatchは、これまで挑戦した日本人のランナーの誰一人としてサブ24を達成していない。それだけ難しいレースでもあります。今回のグランドスラムで自分がターゲットにしていた4レースでサブ80、5レースでサブ100の達成は現実的ではないが、グランドスラムのすべてのレースでサブ24を達成することをめざしました。
恐らく自分の周りの多くの人が、短期間で4本の100マイルを走ってきていて、サブ24は難しいのではないかと思っているだろうし、自分自身もグランドスラム達成のために、セーフティーに完走するという選択肢が残されている。それでも、サブ24を狙うことを選択しました。
Wasatchでは高地順応するために早めに渡米し、コースの2回ほど試走し、身体を慣らしていきました。1週間ほど滞在することで、Leadvilleのときの高地順応が余韻として残っているのか、Leadvilleに訪れた当初のときのような高地特有の苦しさは感じませんでした。もしLeadvilleでの高地順応がなければ、Wasatchではこんなにもスムーズに高地順応ができなかったと思います。
レースは、途中でタイムテーブルから遅れ始めた。「自分には無理なのか」と疑う瞬間もありましたが、こういう時に活きるのが経験です。自分は誰よりも100マイルを走ってきている。そう信じて抑えにいくと、脚が動きはじめ、140km地点でようやくグランドスラムとサブ24の達成を確信することができました。
もちろん、それは自分だけの力ではありません。H.U.R.T.で知り合って以来の友人であるイアンが、レースを通してサポートしてくれたり、Tomo’s Pitのクライアントであるベンジャミンがペーサーをするためにわざわざスイスから来てくれたり、それ以外にも家族や日本の友人たちのサポートがあってこそのこと。
グランドスラムを終えて、つくづく思うのはトレイルを走り続けていなければ出会うことがなかった友人たちがいてくれたからこそ、自分は走り切れたということです。
でも、自分の夢はこれで終わりではありません。「夢の墓場」であるBarkley Marathonsのフィニッシャーになること。キング牧師を殺害した凶悪犯の脱獄劇から生まれた“悪魔のレース”の5度目の法螺貝は、すでに鳴っているのです。
Result〉
Old Dominion 18:52:27 2nd overall
Western States 20:19:58 39th overall
Vermont Cancelled
Devil’s Gulch: 23:54:44 1st overall
Leadville 23:31:18 39th overall
Wasatch 23:17:17 6th overall
Best 4 x 100 times: 86:01:01 19th/406 finishers since 1986
グランドスラムで活躍したSalomonギア
今回のグランドスラムは、Barkley Marathonsでも使った、超⻑距離を⾛り切れるクッショニングを備えている「S/LAB GENESIS」一択。また、22年のバックヤードウルトラ以来、愛⽤しているソックス「S/LAB NSO VERSATILITY」は、程よいコンプレッションがランニング中もリカバリー中も手放せない(脚話せない)ギアです。6月から10月にかけて開催されるグランドスラムは暑さ対策も重要です。S/LAB SPEED BOBもマストなギアでした。
FOCUSED ITEM
S/LAB GENESIS
S/LAB GENESIS は、コンペティションへのこだわりから解放されたシューズ。レース仕様の抜群のグリップと優れた保護力、快適さを備えていますが、自己最高記録よりも共有経験を積み重ね、数値ではなくアドベンチャーとして距離を語れるような、トレイルランニングの新しいアプローチを提案します。
S/LAB ULTRA KNEE
※S/LAB NSO VERSATILITYに近しいモデルを紹介しております。
ウルトラディスタンスのために開発された S/LAB ULTRA KNEE は、トリガーポイント(〇部分)に Resistex® Bioceramic ファイバーを使用することで微小循環系の働きを高め、エネルギーリターンを向上。軽いコンプレッションで筋肉をサポートし、速乾性に優れた配合で履き心地も快適です。長時間着用しても気にならない、程よい着圧のソックスです。
S/LAB SPEED BOB
トップアスリートからのフィードバックをもとに、S/LAB SPEED BOB の保護機能を高めました。より幅広く、形や角度も変えられるようになった縁は、適度に調節可能です。ホワイトカラーのメッシュ素材はとても軽く通気性抜群。アイスキューブを入れるスペースも充分です。炎天下でも太陽光線から頭部をしっかり保護してくれます。
井原 知一/TOMOKAZU IHARA
・Answer4アスリート / Salomonアスリート
・株式会社TOMO’S PIT代表(Facebook / Instagram)
※オンラインコーチング
2007年当時、身長178cm・体重98kgの肥満体系であったが、ダイエット企画の社員サンプラーとなり毎日30分トレッドミルを走り続けた結果、3ヶ月で7kgの減量に成功。それ以来、走ることがライフスタイルとなりトレイルランニングと出会う。夢は、100マイルを100本完走するとともに走る楽しさを広げていくこと(2022年12月時点で100マイルを64本完走)。