―クロスカントリースキーからトレイルランニングへ。U23期待の星、世界へ羽ばたく―
世界各国で盛り上がりを見せるGOLDEN TRAIL SERIES。 世界中のトップアスリートが競うトレイルランニングのワールドシリーズです。 「ワールドシリーズ」 と国別対抗戦 「ナショナルシリーズ」 の2つのシリーズで構成されており、 今年はワールドシリーズの初戦が日本で初めて開催されてシリーズ戦が開幕し、 海外トップアスリートの走りが大きな注目を集めました。
「ゴールデントレイルナショナルシリーズ ジャパン」 (以下、 GTNSジャパン)では、 シリーズ2戦(中央アルプス・野沢温泉)とナショナルファイナル1戦(白馬)の合計3戦で開催されました。 2024年10月開催のグランドファイナルに出場できるのは、 総合ポイントランキング男女上位2名と23歳以下の男女1名(U23)。 2024年9月8日に行われたシリーズ最終戦 「白馬国際クラシック」 の28kmでは、 ハイレベルなトップ争いが繰り広げられました。
前日までの曇天のち雨の予報は大きく外れ、 朝から初秋と思えない蒸し暑さ。 それにも関わらずトップは序盤から高速展開が繰り広げられました。「男子2位!」 会場に響き渡る
MCの声と共にトップからわずか4分もたたないうちにフィニッシュテープを大きく掲げて笑顔を魅せたのは、 22歳の若きエース松本祥汰選手でした。
U23最初で最後の年、 優勝で飾りたかった最終戦
2024年から、 GTNSジャパンでは23歳以下の男女1位が選出されるU23のカテゴリーが設けられました。 若手選手の育成と世界への挑戦を支える重要な存在。そのカテゴリーで圧倒的な強さを誇るのが、 松本祥汰選手。小学生から大学時代までクロスカントリースキー競技に打ち込んできた経験を持ち、 昨年引退してトレイルランナーとして本格的に活動を始めたという彼。もともとクロスカントリースキーのためのオフシーズンのトレーニングとしてトレイルランニングも並行しており、 キャリアは10年以上。
「ちょうど運良くU23の枠ができたのですが、 今年が最後ですね」
U23のカテゴリー対象ですが、 今年23歳になる彼はこれがU23最初で最後の年。でも、そんなことはもはや関係ないようにも思えます。なぜなら他のトップ争いをしている選手等は男子ソロで競っているわけですが、 ファイナルで彼は男子総合2位に付けたのです。実は、 第二戦の野沢温泉でも、 吉野大和選手に次いで2位でした。
「吉野選手はいつも自分の前にいるので、 いつかは追い抜きたいですね」
最後の最後まで、 吉野選手の背中を追い続けた松本選手。あと一歩、あともう一歩届かなかったものの、その差はわずか4分ほどでした。
「白馬岩岳を下りたところでは見えなかったのですが、 長いロードで姿が見えました。ロードが苦手なので、まさかロードでは見えないだろうと思っていたのが意外と走れていたようで。約1分差を維持しながらしっかり走れたのは良かったですね」
クロスカントリースキーで培った登坂力が強み、 課題は走れる区間
苦手を克服すべく、最終戦にむけてロードの練習をしてきたという松本選手。スキーに費やしてきた学生時代。スピード練習などほとんど経験がないなかで、 嫌々ながらもトラックでも練習を積んできた努力が実を結んだといいます。
「(急峻な山も特徴ですが)ロード区間が長いコースなので、そこで離されるかもしれないと思っていました。でも、意外と差を維持できたのはしっかり練習を積んで来られたからだと思います。 登りが得意なので、自分の得意を活かして八方の登りで追いつけるかなと思ったのですが、吉野選手がこちらをたまに振り返るのが見えるんですよ。ヤバいと感じたのか明らかにスピードが上がって全然追いつけませんでした。私にとってゲレンデは滑るところなので(笑)、八方も何度も滑っているスキー場なのにそれを登るというのは精神的にキツかったですね」
急峻な下りも得意ながら、登りで消耗してあまりいい走りができなかったと反省の色も見せました。
「今回はせっかくだから優勝してグランドファイナルに行きたいという気持ちはありました。野沢も今回も、フラットなロードと走れる下りで吉野選手に離されてしまったんです。 海外選手も走れる区間はかなり飛ばすので、グランドファイナルまでの1ヶ月はそこを重点的に強化していきたいですね」
トレイルランニングの本場で、どのくらい世界との差を埋められるか
グランドファイナルの舞台は、スイス南部のアスコーナ・ロカルノ地方。トレイルランニングの真髄が感じられるヨーロッパアルプスで、雄大な山々に囲まれて、各国のエリートアスリート達と競い合うことになります。
「何度かヨーロッパの山を走ったことがありますが、日本では味わえないテクニカルさで、時には本当に危ないと思うようなところも走ります。ヨーロッパの選手達は頭のネジが飛んでいるかのように突っ込んでいくので、自分もネジを外して頑張っていきたいと思います。4月のKOBE TRAILでは26位だったので、まずは20位以内を目指したいですね」
今日のレースの満足度を点数にするなら、82点との答え。側から見れば、100点満点の走り。その理由を問うと “朝ごはんを食べすぎちゃって” と思いも寄らない返答(朝食を食べ過ぎてスタート直後に胃が痛かったのだそう。)アスリートの姿から一転、少年のような表情を見せてくれました。
「子供達にとって、日本国内でトレイルランニングに出会う・触れ合う機会はまだそう多くないと思います。私は(クロスカントリーやオフシーズンの山でのトレーニングなど)この環境に生まれたおかげで素晴らしいスポーツに出会うことができました。私が若手で頑張ることによって、その姿を小さい子供たちに見てみてもらい、やってみたい!と思ってくれたら嬉しいですね。GTNSのU23にもチャレンジして欲しい。そのためにもこれからもこの競技を続けていきたいと思います」
レース直後ながら、 終始笑顔で話してくれた松本選手。若手ながらこれまでのキャリア、実力の基盤があるのはもちろんのこと、まだまだ成長が期待されています。これからの更なる活躍が楽しみです。
撮影 : UNKNOWN FILMMAKER
Photo : みついしんたろう
Video : 尾崎 紘太朗・山脇竜馬(video Editing)
Text : 中島英摩
松本祥太選手を支えるサロモンのトレイルランニング・アイテム
―このシューズ(S/LAB Genesis)を選んだ理由は?
「国内外でウルトラディスタンス向けとして人気のシューズなのですが、トップアスリート向けに開発されているS/LABシリーズなだけあってフィット感が良く、しっかり反発もあるのでスピードが出るんです。 それでいて、ヒール部分にあるシャーシというプレートが足を守ってくれます。ショートレンジ向けのシューズに比べると、スピードや接地感は劣りますが、後半疲れたときにスピード系のシューズでは着地が不安定になりやすい。脚が終わってきた時でも安定感があるぶん攻め続けられるので、後半の失速を防ぐとためにもこのモデルを選択しました」
―ウエアのこだわりは?
「今日の天気は、特に暑さは感じませんでした。SENSE Aero シングレットを着用していたのですが、カラーも白なので水を浴びると、もう裸みたいですよね(笑)スピードを出して風を切って走って空気冷却できていたのかもしれません」
松本祥太選手を支えるサロモンのアイテム
S/LAB GENESIS
レースの向こう側を目指して。S/LAB Genesis は、コンペティションへのこだわりから解放されて、自己最高記録よりも共有経験を積み重ね、数値ではなくアドベンチャーとして距離を語れるような、トレイルランニングの新しいアプローチを提案します。もちろん、レース仕様の抜群のグリップと優れた保護力、快適さを備えています。
SENSE AERO
次のゴールを目指す。タイムを縮める。ペースを保つ。全力で何かに立ち向かう人にとって、あらゆる要素が決め手となります。Salomon の男性用 SENSE Aero シングレットが、ダイナミックなライン、超軽量素材、強化された通気性を特徴としているのはそのためです。搭載の 37.5® Technology と Ionic+® Botanical 抗菌技術が、体温をちょうど適度に保ち、フレッシュな着心地を持続させます。※松本選手着用のGRAPHIC/ホワイトのカラーは現在お取り扱いがございません
SENSE AERO 5″
男性用 SENSE AERO 5”(13cm)ショーツは、ハイスピードに威力を発揮。トレイルからインスパイアされたミニマルな機能、当社ベストセラーの汎用性の高いインシーム、軽い適度なカバレッジが、動きを妨げることなくあらゆる路面でハイスピードをキープします。
SENSE AERO CAP
次のゴールを目指す。タイムを縮める。ペースを保つ。全力で何かに立ち向かう人にとって、あらゆる要素が決め手となります。ユニセックスの SENSE Aero キャップが、軽量ストレッチウーブン素材と、通気性に優れたオープンウィーブの 4 ウェイストレッチ Aerotech パネルで作られているのはそのためです。大胆なカラーブロックと Salomon のブランドロゴも魅力です。
S/LAB ULTRA 10
ウルトラランニングのための最高の性能基準をも上回るよう設計された S/LAB Ultra 10 は、身に着けていることを忘れてしまうほどの軽さと快適さが特長。François d’Haene にインスパイアされ、彼との共同開発により誕生したウルトラレース専用のこのベストは、Salomon 最軽量の製品。必需品や大容量ハイドレーションフラスクを収納できるアクセスしやすい収納ポケットを多数備えています。
S/LAB ULTRA CREW
S/LAB ULTRA ソックスは、ウルトラレースに特化した機能を多数搭載しています。S/LAB ULTRA シューズと完璧にマッチするこのソックスは、長距離および変化するコンディションに対応。通気性に優れ、足にぴったりフィットしてシワを最小限に抑えるとともに、滑りにくく、かつ摩擦を軽減するシリコンバンドを前足部に使用しています。
ACTIVE
ミニマルなデザインと調節可能なソフトストラップ、幅広のキャップが特長の ACTIVE ハンドヘルド。飲みやすく、こぼれにくいうえ、飲むと圧縮されるので、走行中も水が跳ねたり揺れることがありません。これさえあれば、ランニングに必要な水分補給を十分に確保できます。
松本祥太
小学校から大学までクロスカントリースキー競技に取り組み、オフシーズンのトレーニングとして、地元群馬や長野県の山々を走っていました。春夏はトレイルランナー、秋冬はクロスカントリースキーヤーとして各大会に出場。本年度クロスカントリースキーを引退し、トレイルランナーとして活動を始めます。
2022年
スカイランニング関東選手権 優勝
スカイランニング日本選手権 優勝
2023年
The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉 2位
2023ユーススカイランニング世界選手権 7位
2024 経ヶ岳バーティカルリミット 優勝