―GTNS2024で完全優勝を果たした吉野大和選手の飽くなき挑戦―

何においても連戦連勝、 完全制覇がどれだけ難しいことか。 シーズンを通してコンディションを維持し、 何度も的確にピーキングを行うことがいかに難しいか想像に容易いでしょう。 アスリートの一戦にかける心身のパワーは尋常ではありません。 メンタル、 フィジカル、 どちらも強く、 絶えず闘志を燃やし続けることが必要です。 そんな偉業を成し遂げたのが、 2024年の 「ゴールデントレイルナショナルシリーズ ジャパン」 で完全優勝を果たした吉野大和選手です。

世界各国で盛り上がりを見せるGOLDEN TRAIL SERIESは、 世界中のトップアスリートが競うトレイルランニングのワールドシリーズ。 「ワールドシリーズ」 と国別対抗戦 「ナショナルシリーズ」 の2つのシリーズで構成されており、 今年はワールドシリーズの初戦が日本で初めて開催されてシリーズ戦が開幕し、 海外トップアスリートの走りが大きな注目を集めました。

2022年に誕生した 「ゴールデントレイルナショナルシリーズ ジャパン」 は今年で3年目。
シリーズ2戦(中央アルプス・野沢温泉)とナショナルファイナル1戦(白馬)の合計3戦で開催され、 総合ポイントランキング男女上位2名と23歳以下の男女1名(U23)が2024年10月開催の 「ゴールデントレイルナショナルシリーズグランドファイナル」 へ出場できるというルール。 2024年9月8日に開催された白馬国際クラシック28kmでは、 最後のポイント獲得を目指すアスリートたちのハイレベルなトップ争いが繰り広げられました。 そして、 みごと3戦全勝を飾り、 2年ぶりに 「ゴールデントレイルナショナルシリーズグランドファイナル」 の切符を手にした吉野選手にお話を聞きました。

トップを守り抜いた王者、 そのすぐ後ろに迫った若きライバルの存在

序盤から先頭で飛び出し、 前半の山場である岩岳山をトップで駆け下りてきた吉野選手。後半に待ち構える白馬八方尾根スキー場までのロードも1位を譲らず黒菱平までリフト3本分の激登りに入ります。 それに追従したのは甲斐大貴選手。 まもなく松本祥汰選手。 黒菱平までの登りで松本選手が甲斐選手を交わし、 吉野選手の背中を捉えます。 その差、 約1分でした。

「フィニッシュ直後は、 優勝できた安堵の気持ちと、 出し切った思いでいっぱいでした」

やや険しい表情でフィニッシュテープを切り、 そのまま座り込んだ吉野選手。 数分後そこへ駆け込んできたのは、 松本祥汰選手でした。 その差はわずか4分42秒。 最後の山場である白馬八方尾根スキー場では、上りでも下りでも後ろに迫る松本選手を脅威に感じたと言います。

「サロモンに加入させていただいて、 やはりサロモンの顔として活躍したいと思っているので、 プレッシャーはありつつもどんな大会も必ず優勝を目指すと心に決めています。 優勝できたものの、 苦手なところや課題が見えてきたので、 もっと出し惜しみせずに攻めたり、 克服したりできる部分があったんじゃないかなと思います。 松本くんは力強くて勢いある若手です。 彼がずっと一定の距離でずっと後ろについているのはわかっていました。
最後のゲレンデもかなり近い位置で見えたので多分詰められていたんじゃないでしょうか。 最後まで逃げ切ってやろう!という気持ちで走り抜きました。 レース中はライバルですが、 ワンツーフィニッシュで一緒に海外に行けることになったのは嬉しいですね。 彼の活躍で自分も頑張れるというか、 すごく刺激をもらっています」

今は世界に遠く及ばなくとも、 一意専心で挑戦し続ける先に成長と希望がある

吉野選手は2022年にもグランドファイナルへ出場しています。 しかし、 現地に着いたその夜に発熱するトラブルに見舞われました。 走るだけで精一杯だったという悔しい思い出から2年、 再び挑戦権を得ました。

「各シリーズ戦をすべて全力で頑張るのはもちろんですが、 2022年は不甲斐ない結果で終わり、 さらに去年は怪我でシーズンを棒に振ってしまったので、 今年は特にこのシリーズにかける思いが強かったです。 まずは1ヶ月後のグランドファイナルまでにさらに力をつけ、 しっかり体調管理をして、 ベストな状態でスタートラインに立てるように心がけたいです」

吉野選手の海外レース経験は5戦ほど。 他国へ行けば全く違う環境に晒され、 そこで戦わなければなりません。 グランドファイナルはスイス南部。 ヨーロッパは、 山の地形や路面が全く日本と違うため、 現地や近隣国の選手がその環境で育ってきているアドバンテージは大きく、 日本からちょっと行ったぐらいでは適応できない、 まだ全然歯が立たないと感じている彼。 世界の壁ははるかに高いとわかった上で再び挑む、 グランドファイナル。 どう戦うのでしょうか。

「もちろん、 いつか世界の舞台で表彰台に立つ大きな目標はありますが、 世界と戦うとなるとレベルはもちろん高いですし、 実際はまだかなり力が及ばないと肌で感じています。 でも、 技術面は及ばなくとも他の選手が暑さでバテているところを自分はうまく補給で乗り越えるというように、 いろいろなテクニックを駆使して、 何とかうまく上位に絡められたらと思っています。 今年も変わらず 『挑戦者』 として力試しすることになりますが、 海外のエリート選手が集まる場で、 世界の技術やテクニックを目の当たりにして少しでも吸収・インプットして、 今後のレースに生かしたいと思います。 どんな距離でもどんな大会でも、 どんどん挑んでいかないことには何も始まらない。 挑戦し続けることが重要だと思っています」

何か一つでも吸収し、 自分のものにする。 そうやって経験を重ね続け、 いつか自分の本当の最大パフォーマンスを引き出すことができた時、 今は届かぬ 「大きな夢」 に手を伸ばして掴みとる日が来るかもしれない。 「それも、 あり得ないことではないのかな」 とはにかんだ吉野選手。 王者の希望に満ちた目は、 ファイナルを終えたその瞬間からすでに世界を見ているのでしょう。

撮影 : UNKNOWN FILMMAKER
Photo : みついしんたろう
Video : 尾崎 紘太朗・山脇竜馬(video Editing)
Text : 中島英摩

吉野大和選手を支えるサロモンのトレイルランニング・アイテム

―このシューズを選んだ理由は?

「今シーズンは全てS/LAB PULSAR 3を履いています。 足馴染みがよく、 ショートからミドルまでの距離であれば、 ふかふかな路面でも硬い岩場でも、 ドロドロなトレイルでもしっかりグリップしてくれます。 距離、 地形、 サーフェイスを選ばないシューズなので、 これ一択です。 一般ランナーで、 このレースで記録を狙いたい、 少しでも速く走りたいという人はS/LABのエリートモデルにチャレンジしてみても良いと思います」

―雨予報から一転、 暑いレースになりましたが、 ウエアのセレクトはどうでしたか。

「僕はノースリーブが好きなので、 風通しが良く速乾性のあるノースリーブとタイツの組み合わせにしました。 ランニングショーツに比べてタイツの方が身体にフィットして、 ダイレクトに動きが感じられるので、 レースでは何年もタイツで走っています。 最近はキャップを被ることで、 集中できるので気に入っています」



吉野大和選手を支えるサロモンのアイテム

S/LAB PULSAR 3

S/LAB Pulsar 3 は、短距離の激しいトレイルレースで高速の走りを実現します。軽量でダイナミック、かつクッション性に優れたこのシューズは、不確かな地面をどんなに速く走っても、最適なグリップと正確な足運びを可能にします。足の動きに合わせてフィットする革新的なアッパーデザインとレーシングシステムの快適な履き心地も魅力です。

SENSE AERO

次のゴールを目指す。タイムを縮める。ペースを保つ。全力で何かに立ち向かう人にとって、あらゆる要素が決め手となります。Salomon の男性用 SENSE Aero シングレットが、ダイナミックなライン、超軽量素材、強化された通気性を特徴としているのはそのためです。搭載の 37.5® Technology と Ionic+® Botanical 抗菌技術が、体温をちょうど適度に保ち、フレッシュな着心地を持続させます。

CROSS RUN

適度な筋肉サポート、伸縮性、多彩な収納機能が特徴の男性用 CROSS RUN 9(22.9cm)は、寒い日のランニングでもインターバルセッションのウォーミングアップでも、快適な走りに必要なすべてを備えたタイツ。素材にはリサイクルポリエステルを使用しています。

CROSS

CROSS は、日よけや雨よけとして活躍する頼りになるランニングキャップ。リサイクル素材は速乾性があるだけでなく、かぶっていることを忘れてしまうほどの軽さです。

S/LAB PULSAR 3

S/LAB Pulsar 3 は、ショートランの水分補給に最適な軽量でシンプルなベスト。250ml ソフトフラスクが付属した 2 つのフロントポケット、バックに 500ml フラスクやジャケットが入るハイブリッドポケットなど、さまざまなニーズに対応します。SensiFit™ と Quick link で体にぴたりと密着し、安定感抜群です。


吉野大和

高校卒業後、競技から離れるもトレイルランニングと出会い再び走り始める。
現在は群馬県を拠点に全国の様々な大会へ参加しています。また、自身でイベントを開催したりトレイルランニングの普及活動にも力を入れています。

2022年 日本山岳耐久レース 長谷川恒男CUP 優勝
2023年 ハセツネ30K 準優勝
2024年 ハセツネ30k 準優勝
2024年 トレニックワールドin彩の国 100k 優勝