ソフィア・ラウクリに神戸で聞く:クロスカントリースキーとトレイルランニングの頂点を目指して
Golden Trail World Series(GTWS)は2018年に設立されて以来、トレイルランニングにおける世界の頂点を決めるシリーズ戦としてその存在感を高めています。そのGTWSで2023年の女子チャンピオンとなったのがサロモンアスリートのソフィア・ラウクリです。
アメリカ・メイン州出身でユタ大学のクロスカントリースキーチームに所属、2022年の北京冬季五輪に米国代表選手として出場するなど、スキーヤーとして活躍する彼女がトレイルランニングに取り組むようになったのは2022年のこと。ランニングでも才能を発揮したソフィアはサロモンのトレイルランニングアスリートに加わります。大学を卒業した2023年にはサロモンのクロスカントリースキーチームにも加わり、両方の競技でサロモンと強力なタッグを組むことになりました。
2023年のGTWSではモンブラン・マラソン、シエール・ジナール、パイクスピーク・アセントという欧州、米国の歴史ある名レースで次々に勝利を上げます。ソフィア・ラウクリの名は、あっという間にトレイルランニングでもトップ選手として世界中で知られることになりました。
23歳でクロスカントリースキーとトレイルランニングの両方で世界的なアスリートして活動するソフィアは、2024年のGTWSの開幕戦となった「神戸トレイル」に参加するため来日しました。故障からの回復の状況を見極めた結果、神戸でレースには参加しなかったものの、来日中もジムでのトレーニングに励み、アスリート仲間のレースを見届けた彼女にお話を聞きました。
神戸のトレイルは走れなかったが、日本滞在を満喫
「3週間前にスキーのシーズンが終わったばかりだけど、すぐに切り替えてしっかり走れるはず、冬の間もランニングの練習はしていたから。そう思っていたんだけど。」インタビュー前日の記者会見で抱負を聞かれたソフィアは心残りな様子で神戸トレイルを見送ることを明らかにしました。クロスカントリースキーでは今年1月のイタリア、バル・ディ・フィエンメでW杯での初白星を勝ち取り、充実したシーズンを終えたばかりですが、冬のスキーから夏のトレイルランニングへのトランジションは今年で二度目で、まだ慣れないといいます。
「膝と足首にちょっと不安があって、こういう時に無理にレースをしてシーズンを終わらせたくないと思いました。スキーシーズンの後、4月にレースを走るのは早すぎるんだとわかりました。」
「トレーニング自体は、両方の競技でうまく補い合っていると思います。スキーのトレーニングは持久力を高めるのに役立ち、ランニングのパフォーマンス向上にもつながっています。」
「一番の課題はシーズンの移行期で、スキーシーズンが終わるとすぐにランニングシーズンが始まり、ランニングが終わるとすぐにスキーが始まります。体と心をリフレッシュする時間を十分に取ることが難しいのです。」
「私は負けず嫌いでカオスのような状況も好きだから、スキーとランニングで一年中レースができるのは楽しいです。でも、休養も必要で、レースをしたいのに見送らなくてはいけないのはつらいですね。」
神戸トレイルのレース当日は大会のスタッフに交じって、仲間の選手たちに補給のためのドリンクを手渡しながらレースの様子を見守りました。レースに出られなかったことはソフィアにとって残念なことだったに違いありません。しかし、初めて訪れる日本の印象を尋ねると、目を輝かせていきいきと答えてくれました。
「他のレースや会場だったら、レースを見ているだけで辛く感じたでしょうね。でも日本は他の場所とは全く違う、ユニークでクールな経験ができる場所です。だから、そんなに悲しくは感じていません。」
「他の選手よりも少し早めに来て、神戸の街を歩きました。山の近くにこんな大きな街があって圧倒されました。本物の日本食、神戸ビーフもラーメンも、ケーキも食べて。新しい食べ物を試すのが大好きなんです。温泉も体験しました。自分で検索して調べて、一番近くにある温泉に行きました。スキーでもランニングでもレースのための旅行ではこんなふうにその街を探索する余裕がないのですが、今回は日本の文化を楽しむことができました。」
才能を開花させながらも、現実を受け入れて前に進むことの大切さも知る
初めての日本滞在でグルメや温泉を楽しんだという話しからは、ありふれた23歳のアメリカ人女性のように感じるかもしれません。しかしソフィア・ラウクリは昨年の世界のトレイルランニング・シーンで最も活躍した女性アスリートの一人です。とりわけ、6月のモンブラン・マラソンでは2位のヤオ・ミャオを12分以上引き離す圧倒的な勝利が話題となりました。
「去年は大学を卒業すると、すぐにトレイルランニングのシーズンが始まりました。最初に走ったモンブランは最初から飛ばしすぎてはいけないと聞いていたので、前半は余裕を持って走っていました。それなのに後半の登りの途中では熱中症気味でちょっとフラフラし始めて。きっと誰かに追い越されると思っていたら、後ろの選手は10分以上離れていると知らされました。そこからは必死になって完走したんです。あんなふうに優勝できたのは自分でも驚きでした。」
しかし、モンブランでの優勝は決してまぐれではなかったことを、8月のスイスでのシエール・ジナール、9月のアメリカでのパイクスピーク・アセントでの勝利で証明してみせました。パイクスピークではレース終盤までジュディス・ワイダーのリードを許しながらも、作戦通りに最後の4キロを過ぎてから一気にリードを奪う巧みなレース展開で優勝しています。ただ、11月のイタリアでのGTWSグランドファイナルでは首位を逃して2位にとどまりました。
「2023年は私にとってほぼ完璧なシーズンで、GTWSの三つのレースで連勝できたのはエキサイティングな経験でした。」
「グランドファイナルは自分でもベストなコンディションではないと自覚していました。冬が近づいていてスキーのためのトレーニングにも時間を費やしていましたから。他の選手がしっかり調整していることを知っていたこともあって、グランドファイナルは辛いレースになりました。レースでは常にベストを尽くしたいから残念でした。」
「でも、もし私がベストの状態でグランドファイナルに臨んでそれで負けたとしたら、それも辛かったでしょう。すべてのレースで完璧を求めることはできない。そう考えてからは次のステップに進むための切り替えができるようになりました。」
GTWS、冬季五輪、そしてその先
昨年のトレイルランニングでの成功に満足するだけでなく、思い通りにならないレースでもがく経験もしたソフィアは、今シーズンはどんな目標をその胸に抱いているのでしょうか。
「2023年のGTWSでの成績は自分自身への高い基準になりました。今年はそれを上回ることを目標にしていますが、世界中から強い選手が集まる中で連覇を達成するのは簡単ではありません。でも、私はチャレンジを続けます。」
今回の神戸でのレースをスキップしたことで、GTWSの第3戦となる5月のゼガマ・アイスコリ(スペイン)が彼女にとってのシーズン開幕戦となります。その後は昨年自らの飛躍の舞台となった6月のモンブラン・マラソン(フランス)、8月のシエール・ジナール(スイス)へと転戦します。そして秋になれば再びクロスカントリースキーのシーズンを迎えます。
「スキーヤーとしては、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪が当面の目標になります。ただ、スキーだけでなく、ランニングと両方で強い選手になりたいという気持ちを持っています。」
23歳のアスリートにさらにその先の目標を聞くのはまだ酷かもしれません。ソフィアは「特にランニングの方は自分でもまだ初心者だと思っていて、長期的な目標は思い浮かばない」といいながらも、自らの将来について話してくれました。
「二つのスポーツに並行して取り組んでそれぞれで最高のパフォーマンスを発揮できることを証明したいと思っています。それができたら、スポーツ選手としての私のキャリアの中で最も誇りにできる成果になるに違いありません。」
トレイルランニングとクロスカントリースキーという二つのアウトドアスポーツの両方で挑戦を続ける。そんな目標を共有して、ソフィア・ラウクリとサロモンはさらなる高みを目指します。彼女の今後の活躍に期待が高まります。
ソフィア・ラウクリを支えるサロモンのトレイルランニング・アイテム
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S/LAB Pulsar 3 は、短距離の激しいトレイルレースで高速の走りを実現します。軽量でダイナミック、かつクッション性に優れたこのシューズは、不確かな地面をどんなに速く走っても、最適なグリップと正確な足運びを可能にします。足の動きに合わせてフィットする革新的なアッパーデザインとレーシングシステムの快適な履き心地も魅力です
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